鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「幸せな恋、集めました。」

2019年9月19刊。短編集で28話所収。本作はマンガワンにて2019年4月28日より連載中。

立葵さんのtwitterでは最新話が紹介されており、RTでタイムラインに流れてきた。面白かったのでマンガワンに行って第一話を読み、とても面白かったので単行本を購入した。悔いなし。

主に若い男女のほのぼの恋愛話だが、タイトルにある通り、すべて幸せなシーンのみ切り取っているところに大きな特徴がある。

恋愛物語はエリック・シーガルの「ラブ・ストーリーある愛の詩)」以来、バッドエンドでなければいけない呪いがかかってしまった。この呪いを解いて、「誰も不幸にならなくてもラブストーリーは描ける」ことを示したのが新井素子である、と僕は考えている。恋愛漫画の系譜はどうであるか、よくわからないが、ハッピーエンド「だけ」で読める作品を作るというのは、とてつもなく大変なことなのではないかと思う。

現実世界は次から次へと大変なことが起きるのだから、二次元の中でくらい、何の心配もせずしあわせな気分にひたりたい。そういう気持ちを叶えてくれる作品である。



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「ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話」2

2巻はさらにパワーアップ。

第7話では小日向とは比較にならぬほどのミニスカートにマニキュア・へそ出し・胸の谷間強調のスタイルをした女子が登校してくるが、桜大門は彼女をすんなり通してしまう。怒る小日向だが……

彼女は教師なのかと思ったが、生徒会長だった。彼女は、おしゃれをしたい女子の気持ちをすこしでもわかろうと、敢えてこのような恰好をしてみたのだった。そして説得力ある言動で、小日向にあまり派手は服装はしないよう言い聞かせると同時に、生徒会に対しては服装規定の撤廃を提案。

生徒会長の大和撫子は、人望がある上に腕力でも男子がかなわないらしく、もちろんスタイルもいい。さらに、彼女に強烈な対抗意識を燃やす副会長の古郡薫。また小日向微笑と桜大門をくっつけようと仕掛ける妹の鈴句(りりっく)など、個性的なキャラがどくどく登場する。さらに小日向の友人、秋名素子が保健委員の出淵遊(いずぶち・ゆう)推しなことも判明し……

沼に嵌まりつつある気がする。



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「ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話」1

2019年10月9日刊。月刊少年シリウス連載作品(2019年5月号~連載中)。

桜大門統悟は真面目な風紀委員。毎朝校門で生徒の服装チェックをしている。いつもひっかかるのは小日向微笑(ぽえむ)。彼女は髪を染め、スカートを短くし、自身は校則に違反していないと主張するものの、桜大門は不適切と叱責するのみ。反発する二人だが、口を利いてみると意外に話が合い……

という王道パターンから始まるツンデレ・いちゃこら物語。桜大門の姿勢は一貫して変わらないが、小日向の方が反発したり、ちょっと惹かれたり、惹かれていることに照れたり、友人に気持ちがバレそうになってごまかしたりと忙しい。二人はさっそく名字ではなく名前で呼び合うようになるが、1巻の時点では、小日向は自分の気持ちに気づいていない(認めていない)ようだ。

惹かれ合っているけれど、当人にその自覚がない、という点では、「高木さん」や「佐伯さん」の同列に並べられる。反発しているけど実は、というのはよくある話のような気もするが、思い浮かぶものがない。

作中では彼らが中学生か高校生か明言されていないが、タイトルにJKと入っているから高校生なのだろう。高校生なら、門限5時を主張する桜大門は変だし、暗くなったら危ないから送っていく、というのも失礼であり時代錯誤でもある。そもそも高校生なら、部活に熱心なところは深夜まで活動をしていることもあるだろうから、夕方に門を閉鎖するのは変だ。表向きは門を閉めても、生徒が出入りできる隙間があるなら別だが。

一気呵成に読んでしまった。病みつきになりそう。



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「島さん」2

  • 川野ようぶんどう「島さん」2(アクションコミックス)

2021年7月28日刊。

第13話で島さんは、万引きというにはかなり悪質な窃盗犯をおいつめ、警察に連れていく。

こういうのは怯えると相手は嵩にかかってくるので、毅然とした態度で接することが第一ではある。が、追い詰められれば当然暴力をふるうこともあるわけで、島さんは、イザとなればこのくらいのチンピラの二人や三人、余裕で片付けられる程度の腕力はあるのだと思っていた。だから臆せずにいられるのだと。

が、第10話で、万引き犯に突き飛ばされたアルバイトの女の子をかばった際に突き指(?)したのを見ると、そういうわけでもなく、年齢相応の運動神経と体力であるらしい。とすると、毎回のように読者に披露している背中の紋々はいったい何なのだ?

第14話は育ての父・稲三の話。砂二(島さん)は自転車にうまく乗れない。それをからかわれ、思わず暴力をふるってしまう。自転車が下手でからかわれるのは構わない、でも自転車をボロだと言われるのは許せなかった、生まれて初めて人からもらったものだから……泣かせるなあ。

連載前の第0話が収録されている。絵柄がちょっと違う。その1は、意図してのことではないが、イキっていた人が島さんの背中を偶然見てしまい、以後大人しくなるというもので、これは、わかる。連載が始まってから、島さんの背中を見た人は(読者以外)いないよね。



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「島さん」1

  • 川野ようぶんどう「島さん」1(アクションコミックス)

2021年1月28日刊。Web広告で頻繁に目にするが、もともとは作者がtwitterに発表していて、バズったことがきっかけだったのではなかったか。その頃に目にした覚えがある。

島さんは、いくつなのか、髪の毛が真っ白いので少なくとも60は過ぎているだろう、もっとかも知れない。生活のために昼間は交通警備、夜はコンビニとバイトを掛け持ちしている。「若い時にヘマして」毎日夜も昼も働かないとピーピーなのだという。

普段は穏やかで愛想がよく、インターネット関連の新機能はなかなか覚えられず若いバイトの子にバカにされる日々だが、怒鳴りまくる客にもていねいに頭を下げ、煙草を売れと騒ぐ未成年には毅然と接するなど、接客態度は見事なものがある。その島さんの背中には派手な龍の紋々が一面に描かれている。現役か、足を洗ったのかはわからないが、島さんは筋者なのだ。

その(元?)筋者の島さんが外道な客をビシーッとする系の話かと思ったが、少なくとも今のところそうではない。冒頭で煙草を買いに来て暴れる未成年子たちも、毅然とかつ穏やかに対応しただけで、相手は退散していく(ただし、手は出さなかったが割と威圧感はあった)。

第二話で、万引きを繰り返しつつ、全然反省していない子の時は、店長は(読者も)この子に相当イライラさせられる。ここは島さんが睨んで脅しをかけるかと思いきや、叱りつけるのはやってきた父親だった。普段は大人しい父の激怒する姿に、さすがに少し反省する姿を見せる……という話である。

第八話は島さんの幼少期の話。母は死に、父親はヤクザの構成員だったが、微罪で警察につかまり、出所すると砂二(島さん)を捨てて逃げた。砂二は知人に預けられるが邪魔者扱いされる。その家に出入りしていたチンピラヤクザの稲三が「今日から俺がお前の父ちゃんだ」と言うのだった。「母ちゃんはまだいねえぞ。これから探さねえとな」が泣かせる。



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「裏バイト 逃亡禁止」7(新刊)

  • 田口翔太郎「裏バイト 逃亡禁止」7

もともとよく意味がわからない話が少なくなかったが、今回は、すべてわからない。中では「人材レンタル」は、ユメと和美がなぜ死ななかったのかは謎だが、話はわかった。それ以外はそもそもどういう設定なのかもよくわからず。

「よくわからない」ところに怖さもあり、すべてがスッキリわかることが望みというわけではないが、今回はさすがにカタルシスが得られず、読後感はよくなかった。

しかし、「裏」の正体が垣間見れる描写もあり、次巻で話が大きく動きそうな予感もある。このあたりでやめておくか? 悩むところだ。



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「ブレイク☆カフェ」全7巻

  • 森ゆきえ「ブレイク☆カフェ」1~7

うーん、読み返してみたけどやっぱり面白い。

著者のマーガレット初連載作品。マーガレットはといえば「エースをねらえ!」とか「ベルサイユのばら」とか「花より男子」とか、本格少女漫画(?)の砦みたいなイメージがあるが、一方で、今でも「まいっちゃうわマチコさん!」を掲載したりしているし、ぶっとんだ作品にも割と理解があるのかも知れない。

ドタバタナンセンスギャグ。四ッ谷寿々子は兄と二人暮らしの女子高生。生活のため喫茶店を開業したが、兄が借金して購入した土地は自殺の名所と言われる崖の上で、最寄りの民家まで10km以上離れているところだった。……とまあ、バカバカし過ぎる設定だし、この兄はバカで何もわかっていないし、じゃあ妹がしっかりしているのかというとそれがまた……というわけで、真面目に読み解こうとすると腹が立ってくる。が、寿々子はは可愛いし兄も見た目はイケメンだし、畳みかけるような展開に笑うしかないという作品だ。

ギャグにもいろいろあるが、テンポというか「間」というのは大事だな、と思う。この面白さを味わうには作品に接する以外にない。口で説明することはできない。

とはいえ、各巻ごとに詳細に述べるほどでもないので、7冊まとめて紹介しておく。マーガレット・コミックスの1巻の発売は2005年月25日、kindle版の1巻は2019年7月26日。