鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「金田一少年の事件簿」「金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿」

2017年11月17日刊。

本日広告を見てこのような作品があることを初めて知った。マガポケで無料で読めると知り、1巻分を読んでみた。面白い。面白いのだが、元の話を知らないから、面白さもイマイチ(以前、ずっと「少年マガジン」を購読していた時代があるから、「金田一少年の事件簿」という作品自体は知っているが)。

なので、元作品も買ってみた。ちょうど1巻相当分だったからよかった。

連載は1992年開始。この本は2004年に文庫化されたもの。オリジナルのマガジンコミックスはAmazonでは見つからない。絶版になったものと思われる。

こういうミステリーは好きである。あまりにも現実離れしているがために、純粋に物語として楽しむことができる。行き過ぎるとただのクイズになってしまい、その境界は難しいが。連日、人を殺して何とも思わない人間などいるわけがない、と言ったらおしまいである。

とはいえ、ツッコミどころ満載なのも事実で、だからこそこうしたスピンオフ作品もできたのだろう。元作品に人気があった証拠だが、これは「カイジ」のスピンオフ作品「トネガワ」「ハンチョウ」「イチジョウ」などが、脇役を主人公にした純然たるスピンオフであるのに対し、「北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」が元作品へのツッコミになっているのと似ている。

ところで「オペラ座館殺人事件」では三人の女性が殺される。外伝の方では、一人目は普通に服を着ているが、殺されたはずみで足を大きく開き、パンツが見えている。二人目は、上半身はシャツを着ているが下半身はパンツのみである。三人目に至っては全裸であった。ここは原作ではどうなのかと確認すると、外伝で描かれているシーンは原作通りなのだが、原作ではさらに、二人目の女性がシャツの下がノーブラで、シャツ越しに乳首が見えている……ところがくっきりと描かれている。

僕が読むようになったのは連載が始まって10年以上経ってからで、こうしたシーンはなかったと記憶している。連載開始時は、人目を惹こうと(?)結構派手なことをしていたんだな。



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「デキる猫は今日も憂鬱」1

  • 山田ヒツジ「デキる猫は今日も憂鬱」1(シリウスコミックス)

2019年4月9日刊。

猫の諭吉は凍死寸前のところを福澤幸来(さく)に拾われた。しかしこの主人は生活能力が壊滅的。幸来がまともな生活を送り、働いて稼いでくれないと、自分の生活も成り立たないと考えた諭吉は、家事一切を引き受けることに……

しゃべる猫、思考する猫は存在するが、家事をする猫というのは初めてではないか。諭吉は目は釣り目で怖いし、しゃべらないし、舌打ちするし、でもやっぱりかわいい。猫だから。

余談だが、仕事はできるが家事のできない女性、というのは、「かわいすぎる男子がお家で待っています」(高瀬わか)のレオとかもそうだけど、「女性は家事ができて当たり前」という前提があるからこそ、「何もできない」ことにギャップを感じるので、そういう前提がまだあるのか、という点は感慨深い。今どきの20代の独身だったら、男も女も家事能力はたいして変わらないだろうと思うが、実際にはどうなのだろうか?



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「おじさまと猫」1

2018年2月22日刊。twitter発の漫画。

猫漫画に外れなし、を証明するような作品。

妻に先立たれ、一人暮らしとなった男性は、猫を飼うことにする。その時選んだのは、ペットショップでずっと売れ残っていたふくまるだった。ふくまるは正直なところ、客観的に見てさほど可愛いとはいえない。だから売れ残っていたのだが、飼い主にとっては飼い猫が何よりも誰よりも可愛いのだということが伝わってくる。

熟年男性と猫の日々を描いただけの話。何も事件は起きない。そこがいい。



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今年最高の一冊か?「ペンと箸」

2017年1月17日刊。Webサイト「ぐるなび」の「みんなのごはん」に掲載された作品をまとめたもの。

今年買った本の中で最高の一冊かも知れない。数日前に届いて(珍しく紙で買った)、三回くらい読み返しているが、そのたびに涙が出てくるのだ。

漫画家の子どもにインタビューし、当該作家の好きな食べ物を教えてもらい、それを紹介する企画。田中は、インタビューの内容を漫画に描く際に、インタビューの相手やその家族を、漫画家のタッチで描くのだが、これが実にうまい。単に顔がそっくりというだけでなく、この漫画のキャラクターだったら、こういう表情をするだろうな、こういうポーズを取るだろうな、というのが見事に再現されているのだ。

インタビューは、いろいろな話をした中から、作品にまとめるにあたってエピソードを取捨選択する。どういうまとめ方をしたかにインタビューアーの人間性が出る、と思っているが、田中圭一がこんなにも暖かく、こんなにも大きな人だったのかと、そのことにも感動している。失礼な言い方で申し訳ないが、これまで、手塚治虫の下手なエピゴーネン、くらいの認識しかなかったのだ。

たとえば魔夜峰央の娘さんの回。親子仲がいいんですね、に対して「そりゃそうですよ、なにより父と母の仲がいいですから」というセリフを最後に持ってきたところとか。

畑中純とその娘が、畑中純の版画タッチで抱き合っているラストなんて、何回見ても涙が出てくるし。

吉沢やすみがプレッシャーのためか、ペンを持つと手が震え、吐き気を催すようになって絵が全く描けなくなってしまったというエピソードは壮絶だが、今は孫と一緒に公園にスケッチに行き、二人で互いの絵を褒め合っているという。ペンを持つと吐き気がする症状が治ってきた、というくだりは涙なくしては読めない。

それでいて爆笑するシーンもある。池上遼一が描いた絵を娘がしれっと自分の作品として(宿題で)学校に提出した話。娘本人は、何も言われなかったから気づかれなかったのでは、とのほほんとしているが、田中圭一は、気づかないはずないでしょ! と言って、そこへ「課長バカ一代」(クロマティ高校かな?)のキャラを出してくるセンスはお見事。野中英二を知らない人は、池上遼一のキャラが驚いていると思っただけで何も感じなかっただろうが、わかる人は大笑いしたはず。

赤塚不二夫の娘の話もよかった。ご両親を立て続けに亡くし、呆然としている時に、父の漫画を読んで思わず笑ってしまったと。ギャグマンガは、人に生きる力を与えることができるのだ。赤塚不二夫ほどの強烈な作品であれば。漫画の、エンターテイメントの底力だ。くだらないなんて、とんでもない。

しばらく前にネットに本作が掲載されているのを知り、全23話を一気に読んだ。素晴らしい内容に胸を打たれ(記事を読んで「パタリロ!」を買ったくだりは11月8日に記した通り)、それが単行本化されていることを知り、欲しいと思ったのだが、実はちょっと躊躇があった。1000円を超えると気軽には買えない。まして、Web上では今でも無料で全作品を読むことができる。ただ、それは面倒だし、オールカラーとあってはむしろ安い価格設定だ。迷ったが、やはり買うべきと判断し、購入した。もちろん、買ってよかった。

「ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話」3

  • 清水めりぃ「ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話」3(コミックエッセイ)

2021年3月4日刊。2巻から約一年半経つ。何があったのか事情はわからない。

新キャラクター、ハチ谷くん登場。モフ田に憧れ、いつか自分も猫になって会社を変えたいと思っていた……ら、ある日、猫化していた。

本巻はハチ谷くんが主役で、モフ田および彼をモフモフする人の登場は少ない。ストーリーはハチ谷の親友である鴨(猫好き)との友情物語がメイン。恋愛成分は少ない(残念)。

鴨は漫画家志望だが、連載どころか読み切りもなかなか採用してもらえず、袋小路に嵌まり、ネームも描けなくなって苦しんでいた。悩んだ挙句、最後に自分の一番好きなことを描いて、それがだめなら終わりにしようと猫漫画を描いたらこらが大ヒット……というのは、作者自らの投影か。

現在、kindle版は紙の単行本の半額以下である。ブラックフライデー価格か? 買うなら今だ。



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「ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話」2

  • 清水めりぃ「ブラック企業の社員が猫になって人生が変わった話」2(コミックエッセイ)

2019年10月4日刊。

1巻の後半でモフ田くんが女性に見初められ、最終的に結婚することになるのだが、本作はいろいろな人が猫(になったモフ田(とスコさん))をかわいがる、猫に癒される話なので、モフ田に飼い主ができたくらいの意味でしか考えていなかった。

2巻では、ガチの恋愛要素がたくさん盛り込まれている。スコさんにも彼女ができた。モフ田もスコさんもきちんと恋愛しているところがいい。

一般に恋愛漫画は、男が引っ張っていく展開が多い。女が主体の場合も、男に引っ張らせようとする話が多い。女が引っ張っている展開は、それ自体が新鮮で惹かれる。

現在、kindle版は紙の単行本の半額以下である。ブラックフライデー価格か? 買うなら今だ。



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「不器用な先輩。」1

2020年3月25日刊。

後輩男性社員から見た先輩女性は、仕事ができるが厳しい人だった。実は先輩女性は後輩男子が好きだった。という、今どきよくあるツンデレストーリー。類似の作品は数多いが、こうなると、いかに登場人物を魅力的に描くかに焦点が置かれることになる。

本作の先輩(鉄輪:かんなわ)は、仕事ができるように見られているが、実は苦手なことが結構多い。自分で気をつけて、少しうまくいった時にニヤけるところがとてもかわいい。もちろん、本人はうまくいったと思っているけれど全然うまくいっていないこともある。

これ、いき過ぎると、なんでこんな人がクビにもならず大手を振って偉そうにしているんだ? ということになりかねない。そのあたりは最低限押さえているので、今のところ安心して読める。



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