鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「信長の忍び」20(新刊)

2023年5月29日刊。発売日に即購入。

20巻の大台に乗ったところでニュース、大ニュース。へたれ助蔵がついに千鳥に告白! 千鳥もそれに応える! ヤッター!

けど、たった二人で伊賀の里を滅ぼそうとする前、もしかしたら死ぬかも知れないから、ということでやっと勇気を振り絞ったのであり、生きて帰ったら結婚する、なんて、典型的なフラグではないか。大丈夫だよね? 二人とも死なないよね? なんか助蔵、重傷を負っているんですけど!!

まあ、二人が死ななくても、あと一年で信長はいなくなるんだけどね。



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「楽しい古事記」

2000年5月30日刊。1999年1月~12月まで「本の旅人」に連載されたもの。

阿刀田高の「ギリシア神話を知っていますか」(1981年)は新しい境地を開いたと思う。類似の本がいろいろ出るかと思ったが、類似の本を出したのは阿刀田高だけ(「アラビアンナイトを楽しむために」「旧約聖書を知っていますか」「新約聖書を知っていますか」等々)。彼ほどの博識と、分りやすく解きほぐして説明する能力があって初めて成し遂げられることであり、凡人にまねのできる芸当ではないということだろう。

それにしても日本の古典まで手を広げていたとは知らなかった。もちろん、古事記日本書紀も、タイトルは知っているが何が書いてあるか知らない。図書館で目にとまったので、読んでみることにした。

12章あるが、各章とも、古事記の内容をダイジェストして解説した部分と、エッセイの部分に分かれている。エッセイは、記事の内容に関係する土地や史跡を訪ねた時の様子を綴ったものである。これは面白い試みだと思った。

内容に関しては、実は大半の話は様々な形で伝え聞いていたものだった。日本の創世期から天皇の治める御代が確立するまでの「歴史」についてまとめた本ということは、神話をまとめたものだということだ。いや、古事記の内容が断片的に神話のような形で語り継がれてきたというべきか。なるほど、なるほど、いろいろなことが「つながった」気がした。

こういう「勉強」は近年とんとしていないが、漫画やドラマを見る面白さとは別種の刺戟がある。年々活字を読む体力がなくなってきているが、少しずつでも続けたい。



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「40代で脱サラして漫画家」

  • 曽良ハミ「40代で脱サラして漫画家」

2023年3月16日刊。twitterに発表した日記をまとめたもの。エッセイ漫画としては面白い部類。

この人の描く絵は、どことなくノスタルジックで、惹かれる。「しなのんちのいくる」は、その一部が広告でときどき無料で読めることがあるが、とても好きで、欲しいと思うのだが、ちょっと高いので買うのを躊躇している。



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「変な家」

2021年7月27日。サスペンスミステリー。

ここのところ携帯にさかんに宣伝が流れて来るのは、本作を原作とする漫画作品。アプリで少し読むと面白そうだが、当然のことながらサンプルで読めるのはわずかで、課金しなければ先は読めない。買うならkindleと思ったが、Amazonには漫画がない。それで原作の小説を買うことにした。

面白い。一気呵成に読んだ。文字の本をこんなに夢中になって読んだのは久しぶりではないか。

ある一軒家の間取りに謎があるらしい。こういう時、間取りが描かれているページに指を挟んでおき、言及されるたびにそのページを開いて見るもの。電子書籍はそれがやりにくいな、と思っていたら、間取りに言及されるたびに何度も同じ絵が登場する。これは親切だと思った。

気にしなければ気にならないかも知れないけど、ほんのかすかに感じる違和感を掘り下げていったところ、かつてないほどの凶悪な犯罪にたどりつくという、壮大なミステリーである。

敢えてケチをつければ、実際に家を見に行った時に、近所の人が話しかけて来て、その家の住人についていろいろ教えてくれるくだりがあるのだが、ここだけは嘘くさい。都合よく近所の人に出会うのもそうだが、顔見知りでもないのに気軽に話しかけてくるところや、このご時世に隣人の様子をペラペラしゃべるのは現実離れしていると思った。思わず話したくなるような状況をもう少し作ってほしかったところ。「○○テレビの者です、『あの人は今』という企画で取材しているんですけど、ここって歌手の××さんのお宅ですよねえ?」と話しかけるとか。

とにかく、文章は読みやすく、また、思いもよらない方向へ展開していくさまが心地よかった。評判なのは頷ける。



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「岸大武郎短編集」全4巻

  • 岸大武郎「ノスタルジーランド」「夢工場」「ドラマチック・ストーン」「はるかなる表現の果てに……」

オムニバス短編集。1995年に「チャンピオンJACK」(秋田書店)に「針千本の罰」のシリーズタイトルで隔週連載された作品。

バラエティに富んだ短編集。ギャグありペーソスありだが、全体的にシュールな話が多い。最終話「地獄のブローカー文明」は楽屋落ちだが、作者がモデルであろう作中の漫画家がやる気を出すところで終わる。いいオチだ。

連載作品なのに、単行本は秋田書店刊ではなく、自費出版ぽい。事情はわからないが、自分とこの雑誌で連載した作品の単行本を出さないのは酷いと思う。部数が期待できないという判断があったのかも知れないが、電子版ならそこまで敷居は高くないはずだ。出版社が後悔するほど売れたらいいなと思う。

なお作者名は「たけ・だいむろう」よ読むようだ。



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「螺旋じかけの海」全4巻

もともとは月刊アフタヌーン講談社)2014年5月号~2017年2月号に不定期連載された作品。一巻が2015年10月23日に、二巻が2016年12月22日にアフタヌーンKCとして販売されるが、以後刊行されず。作者は出版契約を解除して作者管理とし、現在はkindle版にて全4巻が刊行中。

業界事情は知らないが、自分とこの雑誌に掲載した作品の単行本を出版せずお蔵入りにさせておくのは酷いと思う。売れそうもない、と判断されたのかと思うが、紙版ならともかく電子版なら敷居はずっと低いはず。作者が自分の管理にしたのは正解だが、いろいろと腑に落ちない。

内容はハードバイオSFとでもいうか。舞台は遺伝子操作が産業として発達した世界。水没した街の残骸で暮らす人々の中には「異種キャリア」と呼ばれる異種遺伝子を持つ者が存在する。恐ろしいのは、人間に対しても、本人の意志を無視して勝手に遺伝子操作をする人(組織)がいるということ、そして、人間の遺伝子の割合が一定以下になると人間とは認められず、人権もなくなってしまうこと。だから、異種キャリアな人は、人間以外の遺伝子の割合を必死で抑えようとする。そんな世界で医師の音喜多のもとには、さまざまな悩みを抱えた人が訪れる……

設定も異色なら彼らの悩みも解決方法も異色。そういう状況で、ルールを守りながら、時にはルールを逸脱しても、人間としての尊厳を守ろうとする人たちを描いたヒューマンドラマ、と言えばいいか。第一話から最終巻最終話まで圧倒される。

出版社が後悔するほど売れたらいいなと思う。



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「君の薫る星」

2021年4月30日刊。短編集。コミカルなだけの作品もあるが、コミカルな中にも人情味を感じさせる話が好きだ。

「ガーベラの教室」が出色の出来だ。おじさん三人がカフェでお茶を飲んでいると花売り少女が花を売りに来る。何かひとつ、質問をすることを条件に花を買うと言い、少女は毎日「空はなぜ青いのか」「休日は誰が決めたのか」など、どうでもいい質問をすると、おじさんたちは交代でていねいに説明をする。「こんなことを知って何の役にたつの?」と問う少女に彼らは「なんにも!」と答え、ニコニコしている。少女は、計算さえできれば商売ができると思っているのだ。

そのうちに、世の中のわからないことがひとつずつわかっていくことに興味を覚えるようになった少女は、彼らに訊くのだ。「学校に行くにはどうしたらいいですか」。

表題作は切ない。夫に先立たれた妻が急激に身体を弱らせるが、夫の匂いを嗅いで在りし日を思い出し、笑顔で人生を終える。要約すればそういうことか。夫がなぜ死に至ったのかよく理解できなかったが、そこは重要ではないだろう。

商業誌掲載は「ガーベラの教室」のみ。最近の同人誌やSNSは恐ろしくレベルが高い。

初出一覧

タイトル 初出
ガーベラの教室 「おじさんと少女アンソロジー」2019年12月
デンデンヴァルトの素敵な日 個人同人誌 2019年5月
金魚鉢症候群 SNS(2019~2021年)
スナイパーCの赤い糸 SNS(2019~2021年)
青と赤の悪夢 SNS(2019~2021年)
夏とメダカと僕 SNS(2019~2021年)
サンタ村の夜 SNS(2019~2021年)
花粉山の神さま SNS(2019~2021年)
現代吸血鬼観察録 個人同人誌 2020年2月
君の薫る星 個人同人誌 2019年8月


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