単行本は2007年3月24日、「東京・自然農園物語」という題で草思社刊。文庫本は2009年5月1日刊。
蔵書の再読と言いたいのだが、これもつんどくだった模様。このような本を持っていることすら認識がなかった。だから中身は全く知らない。ミステリーと思い込んで読み始めたが、いつまでたっても誰も死なない。巻末の解説を読んだら、そういう本ではなかった。
都会の一等地に4000坪の農地を持っていたじいさんが死んだ。天涯孤独の身の上で、資産はどうなることか注目されたが、このじいさんは格安アパートの経営も行なっており、そこに住む店子4人に土地を譲るという遺言状が残されていた。ただし、堆肥を使用した有機農業を最低5年続けることを条件として――
そしてヤクザの渡辺仁、ホステスの寺林まさみ、学生の大関直也、「ぼく」ことコピーライターの山川健は、これまで経験のなかった農業(それも農薬を使わない有機農法)に取り組むことになる。その顛末記。
当初は、とにかく農業をやっているふりだけして、土地を手に入れたらさっさと売っぱらって悠々自適の生活を送るつもりで四人は一致していた。が、やっているうちに農業の面白さに目覚め、自分たちの作った作物への愛に目覚め、それをおいしいと言って買ってくれる近所の人たちへの愛に目覚めていく。
専門家の指導を受けるでもなく、本に書いてあることを鵜呑みにしてやってみるだけでこんなにうまくいくもんかとは思うが(もちろん、作中彼らは何度も大きな失敗をするが)、作者の農業への愛にあふれたファンタジーということなのだろう。基本的にはドタバタコメディーで、エピソードの描き方がうまい。
一緒に仕事をしているうちに、なんとなく渡辺とまさにが仲良くなっていく様子が描かれている。また、「ぼく」がまさみにクラっとする時もある。が、本作ではロマンスは全く描かれない。自分としては物足りないが、農業に従事ずることに的を絞ったのはいい判断だっただろう。
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