鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

小説

「最後の一球」

島田荘司「最後の一球」(原書房) 最後の一球作者:島田 荘司原書房Amazon2006年11月28日刊。実に読み応えのある作品だった。このような感慨は、小説でなければ味わえない。名探偵・御手洗潔シリーズの一冊。が、本作においては御手洗はそのキャラクター性を…

「箱庭図書館」

乙一「箱庭図書館」(集英社) 箱庭図書館作者:乙一集英社Amazon2011年3月20日刊。短編集。「小説家の作り方」「コンビニ日和!」「青春絶縁体」「ワンダーランド」「王国の旗」「ホワイト・ステップ」収録。すべて東京の文善寺町という町が舞台になっている…

「5分後に意外な結末」

桃戸ハル 編・著「5分後に意外な結末 ベスト・セレクション」(講談社文庫) 5分後に意外な結末 ベスト・セレクション (講談社文庫)作者:桃戸 ハル講談社Amazonショート・ショート集。大半が桃戸ハルの作品だが、それ以外の人の作品もある。中にはサキや太宰…

「夏の休暇」

海老沢泰久「夏の休暇」(朝日新聞社) 夏の休暇作者:海老沢 泰久朝日新聞社Amazon1989年8月30日刊。短編集、13編所収。初出は1983年~1988年。すべて恋愛小説。「柔らかい孤独」ではスポーツ用品店に勤める登場人物がプロ野球選手とやりとりするシーンがち…

「グリムのむかしばなし」(全2巻)

ワンダ・ガアグ編・絵、松岡享子訳「グリムのむかしばなし」I、II(のら書店) グリムのむかしばなしIのら書店AmazonグリムのむかしばなしIIのら書店AmazonIは2017年7月5日、IIは2017年11月10日刊。Iには「ヘンゼルとグレーテル」「ねことねずみがいっしょに…

「サルビアの記憶」

海老沢泰久「サルビアの記憶」(文藝春秋) サルビアの記憶作者:海老沢 泰久文藝春秋Amazon2006年11月15日刊。短編集。すべて恋愛譚ばかりでスポーツをテーマにしたものが一遍もない。いささか驚いた。海老沢泰久の恋愛小説はこれまで何度も読んだことはあっ…

「オーケイ。」

海老沢泰久「オーケイ。」(文藝春秋) オーケイ。作者:海老沢 泰久文藝春秋Amazon2000年2月10日刊。短編集。「オーケイ。」「厳格なゴルフ」「走る理由」「セカンド・ゴロ」「岐路」「二百万ナッソー」の六編収録。「オーケイ。」「厳格なゴルフ」はゴルフ…

「変な絵」

雨穴「変な絵」(双葉社) 変な絵作者:雨穴双葉社Amazon2022年10月20日。サスペンスミステリー。「変な家」と装丁が似ているが、出版社は別。絵が謎を解く手がかりになっている、と言っても間違いではないが、叙述トリックもある。うっかりしたことは書けな…

「変な家」

雨穴「変な家」(飛鳥新社) 変な家作者:雨穴飛鳥新社Amazon2021年7月27日。サスペンスミステリー。ここのところ携帯にさかんに宣伝が流れて来るのは、本作を原作とする漫画作品。アプリで少し読むと面白そうだが、当然のことながらサンプルで読めるのはわず…

「長い長いお医者さんの話」

チャペック、中野好夫訳、「長い長いお医者さんの話」(岩波少年文庫) 長い長いお医者さんの話 (岩波少年文庫)作者:カレル チャペック岩波書店Amazon短編九編所収。子どもの頃に読んで面白いと思い、のちに岩波少年文庫版を買って持っているが、過日、図書…

「おどろき箱」2(完結)

阿刀田高「おどろき箱2」(幻冬舎) おどろき箱2 (幻冬舎文庫)作者:阿刀田高幻冬舎Amazon単行本は2004年8月25日。連作短編七編。おどろき箱とはいったい何なのか、一応最終話で明かされる。これまで父と母のことはチラリと描かれ、主人公はどちらも好きなよ…

「おどろき箱」

阿刀田高「おどろき箱1」(幻冬舎) おどろき箱〈1〉作者:阿刀田 高幻冬舎Amazon単行本は2004年7月25日。連作短編八編。阿刀田高は大好きで、入手できる本はすべて買い集めていた時期がある。いつしか読まなくなってしまったが。2003年は68歳、まだ老け込む…

「マンボウ最後の名推理」

北杜夫「マンボウ最後の名推理」(青春出版社) マンボウ最後の名推理 (実業之日本社文庫)作者:北杜夫実業之日本社Amazon単行本は2003年2月10日刊。短編三作。「にっぽん丸殺人事件」および「梅干し殺人事件」には北杜夫という自称・名探偵が登場し、事件の…

「妖精配給会社」

星新一「妖精配給会社」(新潮文庫) 妖精配給会社(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazonオリジナルは1964年発行。新潮文庫版は1976年初版。35編。全作品をトータルに云々は難しいので、印象に残ったいくつかの作品について触れる。「暗示」エフ博士はかなり…

「のぼうの城」

和田竜「のぼうの城」上・下(小学館文庫) のぼうの城 上 (小学館文庫)作者:和田竜小学館Amazonのぼうの城 下 (小学館文庫)作者:和田竜小学館Amazon原作小説を読んでしまった。読みやすい文体で一気呵成に読了。時代小説の書き方として、しばしば未来のこと…

「マイ国家」

星新一「マイ国家」(新潮文庫) マイ国家(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon野暮を承知で表題作にマジレスしてみる。国家の三要素は国民・領土・主権で、作中でマイ国の首脳は三番目を「政府」というが、まあ同じことだろう。この三つがあれば国家として…

「おのぞみの結末」

星新一「おのぞみの結末」(新潮文庫) おのぞみの結末(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon「ボッコちゃん」は50編、「ようこそ地球さん」は42編、「ボンボンと悪夢」は36編、「悪魔のいる天国」も36編収録されているが、本作は11編。星新一的には非常に少…

「悪魔のいる天国」

星新一「悪魔のいる天国」(新潮文庫) 悪魔のいる天国(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon読んだことのある話があるなあと強烈な既視感があった。星新一の小説は若き日に一度は(あるいは、二度三度)読んでいるから、覚えがあるのはおかしくないが、そん…

「ボンボンと悪夢」

星新一「ボンボンと悪夢」(新潮文庫) ボンボンと悪夢(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon中学一年生の時、級友から「これ、面白いから読んでみろよ」と言って貸してもらったのが本書。これが僕の初の星新一体験だった。星新一という作家の名を、それまで…

「ようこそ地球さん」

星新一「ようこそ地球さん」(新潮文庫) ようこそ地球さん(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon「ボッコちゃん」と対になる初期作品集。アマチュア時代の習作(をリライトした)「小さな十字架」や商業デビュー作「セキストラ」、また、異色の長いショート…

「ボッコちゃん」

星新一「ボッコちゃん」(新潮文庫) ボッコちゃん(新潮文庫)作者:星 新一新潮社Amazon「にぎやかな未来」の解説を読んで、星新一という作家がいたことを思い出した。昔は本当に好きで、文庫本で出た著書はほとんどすべてもっているはずだ。読み直したいと…

「にぎやかな未来」

筒井康隆「にぎやかな未来」(角川文庫) にぎやかな未来 (角川文庫)作者:筒井 康隆KADOKAWAAmazon筒井康隆の「大いなる助走」を読んで深く感動し、若い頃に筒井康隆を読み漁った当時のことを思い出した。文庫本で入手できる本はすべて買い、読みふけった。3…

「大いなる助走」

筒井康隆「大いなる助走」(文春文庫) 大いなる助走 (文春文庫 (181‐3))作者:筒井 康隆文藝春秋Amazon筒井康隆が本年度の日本芸術院賞・恩賜賞を受賞したことをブログに書き、「大いなる助走」に言及したら、急に再読したくなった。それで30数年ぶりに読み…

「シャーロック・ホームズの蒐集」

北原尚彦「シャーロック・ホームズの蒐集」(創元推理文庫) シャーロック・ホームズの蒐集 (創元推理文庫)作者:北原 尚彦東京創元社Amazon北原尚彦が自身もパスティーシュを書いているというので、購入してみた。まあ、面白いことは面白い。なんにしても、…

「ビブリア古書堂の事件手帖」

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazon栞子が娘の扉子に語って聞かせるという体の物語で、扉子…

「ビブリア古書堂の事件手帖」7

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazon一応完結。6巻の感想で「血縁関係が入り組んでいてわか…

「ビブリア古書堂の事件手帖」6

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazon篠川智恵子がラスボスなのかと思ったが、もっと邪悪な久我…

「ビブリア古書堂の事件手帖」5

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazon栞子の母である篠川智恵子の存在がどんどん大きくなってい…

「ビブリア古書堂の事件手帖」4

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazonシリーズ初の長編である。これまで短編が三話あったため、テレ…

「ビブリア古書堂の事件手帖」3

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~」(メディアワークス文庫) ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)作者:三上 延KADOKAWAAmazonこの巻のプロローグとエピローグのブックエンドはこれまで…