鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

のだめ#9

伝説の(?)「大川ハグ」の巻。比較的原作に忠実だったテレビドラマが、原作と大きく異なっているのもこの部分である。

原作で新春コンサートがドラマでクリスマスコンサートになっていたのは良いとして、ドラマでは大川ハグのあとでクリスマス公演になっているのに、原作では順序が逆である。それで納得。

ドラマでは、千秋がのだめに会いに行かれるように峰のはからいでわざと練習を休みにしたりしたが、公演直前で練習を休むことを千秋が素直に納得したのは不思議だし、飛行機を使わず新幹線で福岡まで行ったり、二泊もしてきたりなど、この間の千秋の行動はとかくのんびりしているのも不自然だった。が、これが公演後の行動であれば理解できる。

もともと、原作では二年近い間のできごとを、ドラマでは3ヵ月に押し込んでいるから、時間の流れに関してはどうしても無理が生じる。その点はあまり深く突っ込むまい。

「オレ様を二度も振ったら、もう絶対許さねぇ!」のセリフ、原作では千秋が心の中でつぶやくだけだが、ドラマではちゃんとのだめにそう言う。これは口に出して言った方がいい。しかも「一緒にヨーロッパへ行こう」のセリフとセットで。この千秋の「告白」のインパクトは、ドラマの方が上。ついでに、電話でのだめが留学するつもりだと言った時、原作では千秋がタクシーの運転手に「止めてくれ」と言って、のだめが「もしかして反対なんでスか?」と答えるが、ドラマでは、道の反対側を歩いているのだめを見つけた千秋が「反対だ」と呟いたのとかぶることになっている。こちらの方がうまい。

それに、のだめとのことを気にかけたまま、とりあえずコンサートは成功させ、それからのだめとのことに決着をつける、という方向よりも、のだめとの決着をつけて、心身ともに充実した状態でコンサートに臨み、のだめもそれを見守る、という流れの方が共感できる。原作では、千秋の日本での最後の公演をのだめは聴いていないことになるが、これは寂しい。

ずっとのだめが千秋を追いかけていたのに、最後の最後で千秋がのだめを追いかけ、告って二人の思いがついに通じる。そしてラスト・コンサート。ベト7。このドラマの終わらせ方は見事だった。音楽を聴いてあんなに感動したのは、単にベト7がいい曲だとか、演奏がいいからという理由ではない。(だからこそ、映画のラストはラブシーンではなく、演奏にしてほしかった。)

(別ブログより転載/original : 2010-04-24)