鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

のだめ最新刊は読んで楽しい話

いったん完結した「のだめカンタービレ」だが、番外編が単行本になった。番外編の連載をやっているのはなんとなく知っていて、当初、6回完結と聞いていたような気がするのだが、本巻では5話まで収録されており、まだとても終わりそうにない。というかあと1話で終わるなら、少々厚くしても一冊に収めただろうから、これはまだ当分続くと思っていいのだろうか。

恋愛ドラマというのは、基本的に「追いかけっこ」だ。それがハラハラどきどきして面白いといえば面白いのだが、長く続くと苦しくなってくる。もう自分も若くないので(笑)、追いつ追われつの部分は楽しいというよりつらい。やはり二人が安定して付き合っていて、喧嘩をしてもそれは夫婦喧嘩的な、予定調和的なものであればこそ安心して見ていられる、という気持ちがある。

この番外編においては千秋とのだめはすっかり出来上がっていて、もう変においかけたりひがんだりいじけたり……がなく、それが嬉しい。嬉しいといえば、個人的に好きだった割に意外と見せ場のなかった黒木君が、しっかりターニャと出来上がっているのも嬉しい。パリ編では、彼が音楽だけでなく人間関係も含めて壁にぶつかり、孤独にあがいている姿がずっと描かれていた。最後はちょっといい雰囲気が匂わされていたけど、ここでは、コンクールの入賞、ドイツのオーケストラのオーディション合格、そしてターニャへのプロポーズと、いいことづくめである。ついでにいえば、三木清良も峰龍太郎の妻っぷりが板についてきたようだ(まだ結婚してないけど)。

峰がたっぷりと見せ場を作ってくれる。いいところで絡んできた重要人物だけど、峰自身の見せ場はこれまでなかった。ここでは峰の良さが描かれている。良さが描かれているという点では、真澄ちゃんも同様。峰と同じく、これまで人間関係という点ではともかく、こと技術面では特に印象に残る場面がないが、ここでは凄腕ぶりが発揮される。もっとも、ティンパニーではないけれど……。

気楽に読めて、笑える場面もたくさんあり(個人的には、千秋が大河内の名前を思い出せず、ドアの陰で大河内が青ざめているシーンがピカイチかな)、しかも、オペラに初挑戦と、音楽面でも新しい広がりが見れる。番外編としても、続編としても、傑作だと思う。そして、役者陣は立て続けに2本映画を撮って気が抜けているところかも知れないが、これも映像化を期待したい。その場合、吉倉杏奈と峰十和子は誰が演じることになるだろうか。平原綾香高島礼子なんてどうだろう。

(別ブログより転載/original : 2010-04-27)