鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

これだけは譲れない「漫画版・ひとりずもう」

無目的でのべんだらりと毎日を過ごしていた高校2年生から、漫画家になりたいと目標を決め、それに向かって無我夢中で努力し、デビューが決まる短大の1年生までを描いた自伝的作品。

帯には「バイバイ、たまちゃん」と書いてあるけど、そしてたまちゃんとの別れがクライマックスではあるけれど、目標を決めてからそれに向かう一途さに感動した。さくらももこは単に才能に恵まれていたのではなく、こうした努力を続けて初めてその才能が開花したのだ。

「あんた何回投稿してもデビューできないんだから、もうムリだよあんなもん。目指す方がどうかしてるよ」
「お母さんに漫画家になってくれって頼んでいるわけじゃないんだからほっといてよ。漫画家になれてもなれなくても、それは私の人生なんだから」
「なまいきな事言うんじゃないよ、あたしゃ心配してるんだよ。デビューできなきゃあんたの苦労が水の泡になるかと思ってさ」
「水の泡になってもいい覚悟でやってるんだよっ」

これまでは総じて親の言うことをよく聞く、真面目な子だったももこが、漫画に関しては親に逆らっても我を通そうとする。このあたりの腹のすわり具合が爽快。また、他の漫画では少々間抜けに描かれる父親が、本作ではかなりいい味を出している。

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「贅沢な」時間を過ごした後、「自分に何かができるとしたら、漫画しかない」と決意するまでの過程が素晴らしい。

(別ブログより転載/original : 2008-03-01)