鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

よしながふみの東京うまい店ガイド

愛がなくても喰ってゆけます。

愛がなくても喰ってゆけます。

書店に平積みになっていたから、新刊かと思ったが、3年以上前に出た本だった。

モーニングで連載中の「きのう何食べた?」は割と好きで、同じ作者の食に関するエッセイ漫画だというので買ってみた。

で、面白かったです。行ってみたいというお店がたくさん。というか、ここで紹介されていたお店は全部行ってみたい、と思うほど。

ところで、中にひとつ、こういう話がある。

作者の友人でアシスタントが、ある出版社に就職が決まった。そんな矢先にある一般誌から原稿依頼を受ける。ところが担当編集者の態度に問題があり、面倒なコトに。作者は、一般誌の編集だから、マンガのことがよくわかっていないのだろうし、作家としての力関係もあるし、自分がちょっと面倒な思いをすれば解決できる問題だから、ことを荒立てるのはやめよう、と思う。ところが、そのアシスタントが、向こうの編集が悪い、これは文句をいうべきだ、といって実際に抗議をする。そして……

その出版社が、就職が決まっていた会社であり、内定は取り消しになった、と。

作者は、彼が味方になってくれたことは(おそらく)嬉しいと思いつつも、自分の就職を賭けるほどのことではなかった、大人げない、とちょっと冷やかな視線も投げる。

問題はそこなのか?

文句を言われた編集者は、その時はムッとしたかも知れないが、これから先、別の漫画家と仕事をすることもあるだろう、そのためには漫画家の事情を知っていた方がいいだろう。教えてくれてありがとう、とは思わなかったのか?

その編集者が、あんな奴は採用しないでくれ、としかるべき人に訴えたとして、もし自分が責任者だったら一笑に付すだろう。あなたよりもいい編集者になるかもね、と言って。そう考える人はいなかったのか?

正式な社員ではなくても、内定しているのだから、会社の側に立つべきだ、漫画家の側についてどうする、というならまったく筋違い。漫画家を振り回すより、漫画家の仕事がしやすいように段取りをすることによって、より質の高い作品が出てくる可能性が高くなる。つまり、その方が最終的には出版社のためなのだ。

そんなこともわからないようなダメ出版社に、就職しなくて良かったと思うよ。

(別ブログより転載/original : 2009-01-15