鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

だから生きていて嬉しい

書店に並んでいたの本書に何気なく目が留まり、買ってみた。夢中になって一気に読了。こんなに面白い作品があったのか。こんな面白い作品を書く作家がいたのか。

書店にずらりと並んでいる本の中のどれに目が留まるかはほとんど偶然である。実際にはいろいろな本に目が留まってしまい、本を置く場所や読んでいる時間の制約のため、その中から絞っているのだが、選ぶ基準といっても、知っている作家でなければ、タイトルだったり、装丁だったり、作者の名前のイメージだったり、……いわく言い難しの勘で選ぶことになる。そうして入手した本が面白いと、自分は本を選ぶことにかけては天才ではないか、神様に選ばれし人間なのではないかと自画自賛したくなる。

連作短編集。未来が見えてしまう山葉圭史が、その能力によって悩み、苦しむ話。人は確定した未来の中でも、いや、確定しているように見えたとしても、その中でいかに生きていくか、ということをいくつかの側面からスポットを当てて描いた話、とでもいうか。ミステリーの要素もあるが、ブックエンドになっている、第一編の表題作と、第六編の「3時間後に君は死ぬ」は、タイム・サスペンスというのか、運命の時刻が刻一刻と迫ってくる、さあどうするどうする、というもので、はらはらドキドキ感がいい。

高野和明は2001年に江戸川乱歩賞を受賞してデビュー。本作が第五作目に当たるらしい。まだ作家としてさほど経験を積んだとはいえないのにこの完成度の高さはどうだろうか。残りの4作のうち3作が文庫化されている。生きててヨカッタ!

6時間後に君は死ぬ (講談社文庫)

6時間後に君は死ぬ (講談社文庫)