- 奥田英朗、「サウスバウンド」(上・下)(角川文庫)
前半は読んでいるのが途中で厭になり、何度も中断を置いて少しずつ読み進めた。いじめに遭う中学生の様子が正視に堪えなかったのだ。瀬尾まいこの「温室デイズ」や景山民夫の「さよならブラックバード」を読んだ時もそうだったが、人がいじめられる描写はいたたまれなくなる。人が殺される場面は結構平気で読むのに。
それと、主人公の父親が、素直で純粋な主人公の担任の先生にねちねち絡んでくるイヤなヤツでもあった。言っていることが正論だけに、先生も面と向かって反論しにくいんだけど、お願いだからもう少し大人になってください、と読んでいる方も言いたくなるような。アンタはいいかも知れないけど子どもがかわいそうだろうと。
後半はがらりと変わる。国家主導で(この場合は国ではなくて地方かも知れないけど、要は権力者が)、金儲けのために、島の財産を略奪しようとする。主人公の父を含む何人かの先鋭的なメンバーはこれに反対し立ち向かう。ぴけを張って警官隊の突入を阻止したり、最後はダイナマイトを爆発させたりもする。
こういうのってどういう感想を持てばいいのだろう。前半のいじめの問題もある意味で同じだが、理不尽で圧倒的な暴力の前には、言葉の説得や署名活動なんて何の意味もなく、ある程度暴力で対抗せざるを得ない。しかし、個人対個人の喧嘩でも、暴力に暴力で対抗していたらエスカレートする一方で、最後はいくところまでいくしかなくなる。権力側の暴力がいかに理不尽なものだとしても、それに暴力で対抗するのは犯罪である。だから生理的な嫌悪感が抜けない。
では、理不尽な暴力にはどう対抗すればいいのか……唯々諾々と従うしかないのであろうか……
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