鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

永井するみの最高傑作

永井するみは好きで文庫本が出ると必ず買うことにしている。初期の仕事シリーズはどれも綿密な取材に支えられた力作揃いであり、中期のさっぱりしたテイストのものも、佳作揃いであるが、一番の傑作はと訊かれたら、デビュー作の「枯れ蔵」と答えただろう。……この本を読むまでは。

8編の連作短編集。14歳の少女が23歳になるまでの10年間のうち、8箇所を輪切りにして集めたもの。定点観測で前回からの変化を感じさせるところがうまい。その変化は、ただちに「成長」と呼べるものではないかも知れないあたりが、人間くさいところ。

永井するみの中期以降の作品は、厳密にはミステリーの枠をはずれるかも知れないが、もともとミステリー作家としてデビューし、常にミステリーテイストは感じさせる作品ばかりだったが、本書はミステリーではない。そういう意味では、新しい境地を切り開いた二度目のデビュー作なのかも知れない。

裏表紙のアオリには「23歳の大人の入口に立つまでの……」とあるが、23歳はまだ大人とは言えまい。これからまだまだ変化があり、成長があり、成熟がある。特に女性はそうだろう。続編を期待したい。

グラデーション (光文社文庫)

グラデーション (光文社文庫)

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