永井するみは好きで文庫本が出ると必ず買うことにしている。初期の仕事シリーズはどれも綿密な取材に支えられた力作揃いであり、中期のさっぱりしたテイストのものも、佳作揃いであるが、一番の傑作はと訊かれたら、デビュー作の「枯れ蔵」と答えただろう。……この本を読むまでは。
8編の連作短編集。14歳の少女が23歳になるまでの10年間のうち、8箇所を輪切りにして集めたもの。定点観測で前回からの変化を感じさせるところがうまい。その変化は、ただちに「成長」と呼べるものではないかも知れないあたりが、人間くさいところ。
永井するみの中期以降の作品は、厳密にはミステリーの枠をはずれるかも知れないが、もともとミステリー作家としてデビューし、常にミステリーテイストは感じさせる作品ばかりだったが、本書はミステリーではない。そういう意味では、新しい境地を切り開いた二度目のデビュー作なのかも知れない。
裏表紙のアオリには「23歳の大人の入口に立つまでの……」とあるが、23歳はまだ大人とは言えまい。これからまだまだ変化があり、成長があり、成熟がある。特に女性はそうだろう。続編を期待したい。
- 作者: 永井するみ
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2010/05/11
- メディア: 文庫
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リンク
- 「グラデーション」永井するみ(東京アンダーザブリッヂ、2007/10/22)
- グラデーション(永井するみ)(たまにっきブログ版、2010/06/27)