鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

高橋留美子はやはりうまいなあ

モーニング連載中の「特上カバチ!」で話題になっていた、ペット禁止の集合住宅におけるペットを飼う人の問題について、以前高橋留美子が作品にしていたなあと思い出して再読。

特上カバチ!」では犬を轢き殺しても謝りもしないオッサンが登場し、ペット派に同情的な話運びに思えるが、フェアじゃない印象を受ける。この事故と、そもそもペットを飼うことの是非は別問題だからだ。

「Pの悲劇」では、主人公の主婦は最初はどちらの味方でもない。ペットを飼っている人がその可愛さを延々と訴えると、反対派の主婦が、ここがペット禁止なのは知っていたはず、こんなところでコソコソ飼われるのはその猫のためにもならない、手放すのが厭ならここを出ていくしかない、何も今日明日になんとかしろと言っているわけではない……と話す。誠に正論である。

正論であるが、なぜそこまで言うのか疑問に感じた主人公が、その家の子に「お母さんはなんで動物が嫌いなのかなー」と訊くと、「お母さんは動物が大好きだよ」との意外な答え。公団に入居が決まった時、ペットが禁止だから、それまで飼っていた犬を泣く泣く手放したと。別れる時に一番泣いたと。

狭い部屋の中で、鳴けないこと、走れないこと、そうした飼い方が許せなかったんだろう……と理解するのだ。

一方的に押し付けるのではなく、逆にレッテル貼りをするのでもなく、相手の気持ちを想像し、理解する努力をすること。これが大切なのではないか。唯一の見開きページの表現力、そのあとのスピーディな展開とオチ。なんて素晴らしい漫画作品なんだろう。

短編集だが、他の作品も、重いテーマをさらりとギャグ仕立てでまとめている。さらりとまとまっているが、胸にずっしりとくる作品ばかりである。高橋留美子は長編もいいが、短編にこそ彼女の真骨頂がある気がする。

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これ、調べてみたら絶版なんですね。高橋留美子作品の短編集は珠玉の作品だらけなのですが、これだけ小学館の売り上げに貢献している作家の作品集をこんなぞんざいな扱いにするところが、小学館の恐ろしさです。今でも現役で頑張り続ける看板作家の短編集をですよ…

全く同意だす。だからBOOK OFFやアマゾンマーケットプレイスは必要なのだ。