- 作者:江口 寿史
- 発売日: 2010/12/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
漫画作品としては2005年の「江口寿史の正直日記」以来と思われる。こういう商法に必ずしも納得しているわけではない。まともな漫画を、つまりそれなりにボリュームのある(単行本化できるような)連載作品を書かず、あちこちに短く書き散らしたものを一冊にまとめ、「お蔵出し」と称して高い値段で売る、というやり方だ。
ボリュームといったって、なにも週刊連載で単行本何十巻、を今さら期待するわけじゃない。月刊誌で一回16ページでも1年で192ページ、単行本一冊分である。月16が無理なら8でもいい。そういう仕事をしてほしい。
目玉作品が収録されているワケではなく、ちょっと絵がうまいだけで、漫画の単行本に1,200円という価格設定。そもそも江口は、出世作となった「すすめ! パイレーツ」にしても人気を不動にしたと思われる「ストップ! ひばりくん」にしても、別に1000万部のベストセラー、というわけじゃない。スマッシュ・ヒット程度である。作品数も決して多いとはいえない。それなのに、何年かに一度本を出すだけで注目されるというのはどうしてか。
それは、逆説的だが露出度が少ないために飢えているせいだろう。僕だって、ふざけるなと思いながら、結局買ってしまうのである。まして今回はおっぱい丸出しの女性が表紙である。ここまでキャッチーな本を出されて素通りできるほど人間ができてはいない。そして悔しいけどやっぱり面白いのである。冒頭のドギワ荘シリーズがいきなり笑える。マフラーズpresentsの「絶叫」などは何度読んでも何度でも笑える。それに女の子がどれも可愛くてそこはかとなく色っぽい。江口寿史の真骨頂である。
「すすめ! パイレーツ」の頃の絵はまだ発展途上だった。「ストップ! ひばりくん」「ひのまる劇場」の頃は、これはこれでひとつの頂点に達したと思われる。が、POPで可愛いけど色気がなかった。言葉を変えると、服を着ていると可愛いけど服を脱がせたいとは思わないキャラだ。「エイジ」の頃は、やたらにリアルになったけど、毒々しくて可愛く感じられなかった。今の絵は、これらを突き抜け、色気があり、可愛くもあり、漫画的なんだけど存在感もあり。「とうとう……ここまできましたか……」とシュトレーゼマンの口を借りて言いたくなるほど。
いろいろ言いたいことはあっても、江口ファンなら迷わず買え!! ということだ。