鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

バブリーな恋愛短編集

  • 甘粕りり子、「長い失恋」(講談社文庫)

すべての恋愛は、長い時間をかけて失恋に向かっている。ホテルを舞台に、男と女の絡み合った愛と欲望を描く10編。

読み始めたのはいつだったか、ずいぶん以前だったのだが、ようやく読了した。あまり甘酸っぱい小説は得意ではないのだが、ひとつひとつが小説としてよくできているな、とは思った。

それと、本作はひとつひとつが特定のホテルを舞台に描かれている。もちろんそのホテルというのはビジネスホテルとかではなくて、僕がこれまで泊ったことがなく、今後とも泊ることがないであろう豪華なハイクラスのホテルだ。それを社会的に成功した人ではなく、若い女性が特に疑問を感じる様子もなく利用しているところが興味深い。

もちろん、一泊5万だろうが10万だろうが、誰だって出そうと思えば出せるわけで、だから優先順位の問題である。そういうことの優先順位が高くて当然とする考え方、価値観の置き方が興味深いといういうこと。ややバブリーなにおいがするが、単行本が2008年の刊だからバブル時代とは関係がない。