鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「間違いだらけのクルマ選び 2012年版」

20代の頃は自動車が欲しくて、欲しいけれど高いし、高い割に種類(車種)がべらぼうに多く、どういう基準で選べばよいのか、自分にはどれが向いているのか、知識がないと話にならないから、毎年発刊される「間違いだらけのクルマ選び」を買って食い入るように読んだものだ。だから当時は、各車のレビューのページを熱心に読んだはずだ。

最初に買った自動車は、その車種を選んだのはいろいろな理由があるが、結果的にトクさんが絶賛していたものだったから、それなりの影響は受けていたのだろう。

そのうちに、「徳大寺節」とでもいうべき文章のレトリックが気に入り、既にマイカーを購入し、買い替えの予定もなく、本来の意味では必要のないはずの本書も、トクさんのエッセイを読むようなつもりで毎年買い続けた。それは2006年に最終巻が出るまで律儀に続けた。

いったん「引退」した徳大寺有恒が再び「間違いだらけ」に手をつけたのは昨年だった。どういういきさつがあったのかは知らない。復活した本は島下泰久氏との共著になっていて、レビューページはほとんど島下泰久氏の手によるようだったため、購入は控えた。

しかし、本シリーズを読まなくなってから、自動車業界の動きがわからなくなってしまった。各車のレビューの前に、冒頭数十ページにわたって、自動車業界の動向や、自動車行政の問題点、自動車関連の技術の方向性やドライバーが気をつけるべきことなどが述べられていて、これが貴重な情報源になっていたのだ。自動車業界の動きは、ニアリー・イコール製造業の動きであり、製造業の動きは、ニアリー・イコール産業界の動きである。そういうことを一般向けにわかりやすく解説する本があってもいいと思うし、実際いろいろあるのだろうけど、毎年同じ時期に同じ人が同じような立場で解説したものとなると、ほかにはないのではないか。

島下泰久氏の文章は、わかりやすいが癖がない。もっと色があってもいいのにな、とは思う。

それにしても、サニーもローレルもマークIIもなくなり、今の車種は大半が耳になじみがない。この本で勉強することにしようか。

2012年版間違いだらけのクルマ選び

2012年版間違いだらけのクルマ選び

(2012/01/04)