鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

毎度ばかばかしいお話で「幕末時そば伝」

落語である。「粗忽長屋」「千早振る」などが文章になっている。設定がちょっといじってあって、導入部分を膨らませてはいるが、途中からサゲ(落ち)はほぼ元の落語そのまんまである。いや、落語として聞いたことはないのだけど、粗筋やサゲの部分はいろいろ引用されたりするので、知っているわけだ。鯨統一郎なので、落ちに何か仕掛けがあるのかと思ったが、どうもそういうわけでもない。

と思いながら読み進めるうちに、だんだんわかってきた。設定をいじったのは、単に登場人物と時代を合わせて統一性を持たせるためではなく、表の話(落語)とは別に、ひそかに進んでいる陰謀があるのだった。さらりとしか触れられていないため、最初は気に留めていなかったが、続けて読むとそれが浮き上がってくる。江戸幕府が崩壊した真の理由がわかる仕組みなのだが……。

落語は、噺を聞けば(知っている話でも)面白いのだろうが、文字にして面白いものとはあまり思えない。裏で進む謀略の方が面白いが、荒唐無稽といえば荒唐無稽、鯨統一郎らしいといえば鯨統一郎らしい。まさに「ばかばかしい話」だ。

紹介には「時代大逆転ミステリー」とあるが、少なくともミステリーではない。

(2012/01/05)

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