単行本を買うのは珍しい。買うつもりはなかったのだが、平積みになって目に付いたため、手に取って前書きを読んだところ、続きが読みたくなって衝動買い。
昔から文章読本の類はたくさんあって、昨今では作家を目指す人のための本もいろいろ出ているようだ。久美沙織の「新人賞の獲り方おしえます」(徳間文庫)、森村誠一の「作家とは何か」(角川oneテーマ21)などは蔵書にある。どうしてこういう本に興味を惹かれるのかわからない。しかし、次々と類書が刊行されるということは、自分だけではないということだろう。
本書は、まず角川書店(野生時代)のバックアップで、本気でプロの作家を目指す人だけを集めた小説講座を開き、その時の講義内容を書籍化したものである。受講生の氏名は伏せられているが、課題に対する講評は克明に記録されている。
本気でプロの作家を目指す人「だけ」を対象にしているということから、講義内容が(従来のものと)どう異なるのかに興味があったが、その点に関しては正直、期待外れであった。大沢在昌は、作家としては実績のある、超一流の人かも知れないが、講師としては素人であるという点をもう少し謙虚に捉えてよかったのではと思う。
毎回のように受講生に課題が出され、提出された作品に対する講評がなされ、その講評は収録されているのだが、かんじんの作品が全く載っていない。一般販売される書籍に収録できるレベルでなかったということや、それを含めると膨大な量になってしまって書籍化自体が不可能といった理由であろうが、テキストとして考えると片手落ちもいいところである。課題作品を省くなら講評を省いてもよかったのではないか。しかし、実際に小説を書いている人にとっては、その部分こそが重要なのではないか。
まあしかし、文章を書く上でのコツのようなものは、プロの作家を目指す人だけでなく、多くの(一般の)人にも参考になるのではないか。