鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「かくかくしかじか 4」

今さら言うまでもないが、東村アキコの(現時点での)最高傑作。自分は東村アキコは「ひまわりっ」から知ったので、あの作品は若き日の東村アキコをモデルにしているとは聞いていたが、お父さんが沖縄に単身赴任するくだりとか、ここまで実体験を作品化していたのかと驚いたり喜んだり。

さて、主人公ともいえる日高先生だが、第一巻を読んだ時から、「え、日高先生って、もしかして、今はもういない人なの?」と誰しもが感じたはず。フラグはビンビン立てているけど、しかし明示的には描かれない。それが、本巻で急展開を見せる。

発売は7月だが、6月号に掲載された作品まで収録されている。普通はタイムラグが生じるものだが、この姿勢には好感が持てる。

ところで、本作でご本人が自ら書いているが、ベタなラブストーリーは苦手だという。確かに、学生時代に主人公は西村君という彼氏と付き合っていて、しょっちゅう泊まりに行ったりしているし、主人公が一足先に卒業すると、西村君から「オレが卒業したら一緒に暮らそう」といわれるような関係である。が、二人はキスのひとつもしない。手も握らないし、抱き合ったりもしない。意図的に避けているのかなとも思うけど、苦手だというのは理解できる。

これに関して、以前から気になっていることを。西村君は今でも理想の人なんだそうで、2006年から連載を開始した「ひまわりっ」にも西村君をモデルにした人物が登場する。が、2004年には最初の結婚をし、ごっちゃんを出産している。で、ごっちゃんの父親は西村君なんだろうか? そうでないのだろうか? はなはだ下世話ではあるが、気になっている。

西村君であれば、ある意味自然な流れではあるが、離婚の理由は知らないけれど既に別れた相手のことを、いくら作品上のこととはいえ、ここまで純粋に好きだ好きだと描けるものだろうか、という疑問がある。何十年も経てば別だが、まだ別れたばかりなのだから(離婚は2008年、「かくかくしかじか」の連載開始は2012年)。

一方、西村君とは遠距離恋愛になってしまい、仕事も忙しくなって自然消滅した、というのなら、厭な思い出はさほどなく、改めてこうして美化して描くことに問題はないように思える。が、となると西村君を「理想の男性」と思いつつ別の男性と結婚したことになるので、元旦那さんがこの作品を読んだらつらいだろうな、などと考えてしまうのだ。

まあ、西村君が実在の人物なのかどうかも怪しいわけだが。