鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「幽霊が返した借金」

  • 翔田寛、「幽霊が返した借金」(PHP文芸文庫)

初めて見る作者名だが、本を手に取って読みやすそうなので入手。実際読みやすく、面白かった。

時代劇ミステリー。副題が「おでん屋こはる事件帖」となっている通り、江戸のおでん屋で働く「こはる」という女が、同心や岡っ引きらの解決できない難事件をズバリ解決していくという話。

人様の家庭の内情などにも首を突っ込むことになる割に、捜査状況を逐一、母親や職場の同僚にペラペラしゃべってしまうのは、探偵役として少々いただけないが、協力関係にある同心や岡っ引きの親分らの人情味あふれる性格設定もあり、楽しめる。シリーズものなのだろう。ぜひ続編が読みたいものだ。

そうそう、一箇所だけ。こはるが「とんでもございません」と言うシーンがある(第二話、110ページ)。「とんでもない」を丁寧なつもりで「とんでもありません」「とんでもございません」としてしまうのは、現代における誤用であり、江戸時代にはなかったはず。こはるがいうのは変である。*1

幽霊が返した借金 (PHP文芸文庫)

幽霊が返した借金 (PHP文芸文庫)

*1:「デジタル大辞泉」には「とんでもない」の項に次のように記述がある。『「とんでも」に「ない」の付いた形だが、「とんでも」が単独で使われた例はなく、「とんでもない」で一語と見るのがよい。とすれば、「ない」を切り離して「ありません」「ございません」と置き換えて丁寧表現とするのは不適切で、丁寧に言うなら「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」「とんでものうございます」と言わなければならない。しかし、最近は「とんでもありません」「とんでもございません」と言う人が多くなっている。』