鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

じわじわくる。「五色の舟」

漫棚通信さまが褒めていた(下記リンク参照)ので、近藤ようこなら間違いないだろうと思って買ってみた。全く知らない作品を買うのは勇気がいるが、確かに間違いではなかった。

作品のテーマから反れることになるか、あるいはこれもテーマのひとつかも知れないが、見世物一座の運営が結構えげつない。畸形や不具を見世物にするのは、時代背景が許容していたことで、それは問わない。が、桜を蛇女と言って売り出し、最初は肌に鱗の絵を描いていたが、のちにそれを彫り物にしてしまう。そういうことがさらりと描かれる。絵はいつでも消せるが、彫り物は一生消せない。さらにはシロクロショー(客の前での性行為)もやらせる。

一座の者はみな仲が良く、無理強いしているわけでも厭々やらされているわけでもないようなのだが、年端も行かない子に、見世物小屋というのはそういうものなのだと、当然のように躾けている座長は、ちょっと怖い。怖いけれど、何の悶着もなく、さらりと描かれる。だから注意していないと読み逃してしまうのだが、ふと本を置いたときに、「あれ、これってひどくね?」と思ってしまうのだ。

そのように、淡々と話が進んでいくけれど、よく考えると結構怖いことが描かれている、一言でいうと「じわじわくる」作品だ。

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