鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

これで完結。「かくかくしかじか」

最終巻だと知ってビックリ。こんなに早く終わるとは思わなかった。もっと読み続けていたかった。ただ、この作品はこれまで自伝エッセイというように言われることが多かったけれど、そうではなく、日高先生の半生を描いたものなのだから、日高先生がいなくなってしまえばだらだら後日談を描いても間延びするだけだろう。ここで終わるのがベストだったのだ。

これまでも、東村アキコの(現時点での)最高傑作だ、漫画史に残る傑作だと言い続けて来たが、その気持ちは今でも変わらない。朝買って、行きの(通勤の)電車の中で人目もはばからず泣いてしまい、帰りの電車の中で読み返してまた泣いた。泣いたから傑作というわけではなく、ところどころにかましてあるギャグが強烈でそれが奇才・東村アキコの面目躍如なんだけど、でもやっぱり泣ける。

Amazonのレビューを見ても、多くの人が軒並み最高点を与えている。僕も同意と言いたいが、敢えて辛口でコメントする。話は素晴らしいが、絵はもう少していねいに描いてほしかった。とても日高先生の教えが生きているとは思えない。時々、気合を入れて描いたっぽい絵はやはりうまく、さすがだと思うが、全体としては短時間で大急ぎで描いた印象を拭えない。単に絵が雑だというだけでなく、コピーの切り貼りが多過ぎて興を削ぐ。

作中でも、漫画はファインアートと違って「1ページに何回も同じ顔を描いて 背景を描いて(略)地道に描いて白い画面を埋めていくしかないと」と書いているのに、実はコピーを貼っているだけで地道に描いていません、ではちょっと……ではないか。

あと、これは東村アキコの責任ではないかも知れないが、kindle版が同時発売されないことに怒りを覚えている。「宇宙兄弟」のように、人気漫画でちゃんと同時に発売されているものもあるのだから、やればできることであり、またやるべきことなのだ。まあ、これについては稿を改めよう。

(2015/4/8 記)