鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「江川と西本」1~10と11

江川も西本も(世代だから)よーく知っているし、森高夕次の野球漫画は改めて言うまでもなく面白い。しかし作画担当が星野泰視なのは驚いた。かつて少年マガジンで長期連載された「哲也-雀聖と呼ばれた男」は面白かったし何より絵が魅力的だった。モーニングで連載された「デラシネマ」も良かった。しかし、スポーツ漫画が描けるとは思えなかったからだ。

読んでみて、それが大変な思い違いであることがわかった。登場人物がちゃんと本人に似ていて、しかも表情が豊かで漫画のキャラクターになっている。また野球のダイナミックな動きもよく表現されている。失礼ながらコージィ城倉先生よりもうまいのではないかと思えるほどだ。

原作もよくできている。当時のことをとてもよく調べてあり、かつ、それが緻密に構成されている。そうだそうだそんなことあったね、と思ったり、あれ、あれってそうだったの? と思ったり、なるほどあれはそういう見方もできるね、と思ったり。彼らをよく知っている(つもりの)人も、よく知らない人も、面白く読める作品だと思う。ついでに言えば、登場人物の誰も悪く書いていないのもいい。

というのが10巻までの総評。11巻は1981年のシーズンが描かれる。

ルーキー原辰徳は期待通りの打撃成績を見せ、開幕投手の西本は白星を重ねる。前年度最多勝の江川は前半はもたつくが後半で調子を上げ、20勝を達成。藤田元司監督の元、ジャイアンツが優勝をする。沢村賞の選考会が開かれるが、そこで、……というところで終わる。

この年の沢村賞に何が起きたのかは、もちろん僕はよく知っているが(当時は大騒ぎだったので)、これを森高夕次がどう描くのか!? いいところで終わりで残念。早く12巻が読みたい。

(2019/9/17 記)


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