鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「能面女子の花子さん」5

  • 織田涼「能面女子の花子さん」5

この作品を取り上げるのは初めてだが、早くも5巻が発売だ。

常に能面をつけたまま日常生活を送る花子さんを巡る四方山話。授業もそのまま受けるし、食事もそのまま取る。どうやら家でも面をつけているようで、誰も素顔を知らない。ほとんどの人は花子さんを恐れたり怖がったりしており、花子さん自身、そのことを知っているのだが、そうした状況自体を超ポジティブな姿勢で受け入れている。……というわけなのだが、よくもまあこんな設定を思いついたものだ。

話としては、花子に恋い焦がれる幼馴染のケンちゃんこと相川賢司と、花子を嫁にしたいと考えているサブちゃんこと能楽師の松田三郎との三角関係や、唯一の同性の友人? 江口香穂との交友関係が中心で、いってみれば、さして目新しいものではない。本作の面白さは、一にも二にも設定の斬新さである(それに基づいて、キャラがぶっ飛んでいる、というのもあるが)。

本巻では、サブちゃんのお姉さん(二葉)が登場したり(初登場ではないが)、サブちゃんのお兄さん(一)に花子さんが心惹かれたり(こ、これは意外だ)するが、なんといってもお宝話は、花子さんの父と母が出会って結婚する話ではないかと思う。結婚して20年経っても「お鍋に一所懸命なお母さんは素敵だ」と娘に言う父、その父に向って「そう思う父さんも素敵」だと答える娘。感動する話だが、その娘は(母も)面をかぶっているのだがら、これ以上シュールな風景はない。

ところで作者は男性なのか女性なのか。Wikiには情報がなく、名前からは判断がつかない。絵柄の、目元などは女性特有の描き方のような印象も受けるが、花子さん(や花子の母)の胸が大きく、胸やふとももを強調したポーズや服装が多い点は男性視線に思える。また手書きの文字も男性っぽい武骨な感じを受ける。長らく疑問だったが、下記リンクの写真を発見して謎が解けた。なお、紙の単行本には著者近影が(小面をつけてはいるが)載っているらしい。それはkindleにも載せてほしい。情報の欠落はいかん。


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(2019/10/29 記)