鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ギフト±」1

  • ナガテユカ「ギフト±」1

ギフト± 1

ギフト± 1

驚いた。本格的なクライム漫画。

絵がうまいのだが、単にうまいというだけでなく、哀愁を帯びている。冬目景と共通するものを感じる(絵柄が似ているというわけではない)。女性作家特有の繊細さというか……。これが本作によくマッチしている。

ストーリーが骨太である。一部の巨匠とか原作付きは別にして、普通は小さな一話完結的ストーリーで始まり、回を追うごとに話が広がっていく、という進め方が普通である(いつ打ち切りになってもいいようにということか)。本作は初回から伏線張りまくりである。え? え? どういうこと? と引き込まれるが、なかなか疑問に対する回答は得られない。

主人公・鈴原環は女子高生である。更生を期待できない犯罪者をひそかにつかまえ、臓器を(時に麻酔もせずに)抜き取り、売っぱらうことを生業としている。当然、臓器売買の組織が後ろにある。その臓器販売先のルートのひとつに林クリニックがある。ここの林医師は、かつて環の主治医で、心臓手術したことがあり、環を探していて、探偵に依頼して行方を調べている。どうやら環の病気は完治しておらず、それを気にかけているようだ。環も林に会いたいと思っているが、臓器を通じて環と林がつながっていることをお互いに知らない。

林は本名を英琢磨と言い、指名手配中である。勤務先での医院長の殺害および放火の疑いである。何が起き、林がどうかかわったのかはわからない。勤務先は英医院という名前なので、琢磨は医院長の甥っこである。この医院は移植分野に力を入れていたということだが。

林が依頼している探偵は、元警視庁に勤める刑事だったようだ。その時の同僚であった桜田瑞希は恋人であるが、警視庁の情報を横流しさせたりもしており、こいつもまともではない。

臓器を抜かれた死体が発見され、桜田らはその捜査に当たる。被害者は環の同級生。環の属する臓器売買組織とは競合する別組織の存在が明らかになり……というところで第一巻が完。ゾクゾクするほど疲れる話だ。