鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ルミとマヤとその周辺」1~3

ヤマザキマリは多くの人がそうであるように「テルマエ・ロマエ」でその存在を知り、それからいろいろな作品を読むようになった。どちらかというとエッセイ風の作品が多い。それらは本人のダイナミックが生き方とギャグのセンスが融合し、どれも面白い読み物であるけれども、本書はそれらとも違う。

一応、創作物語の体を取っているが、作者の幼い頃の体験をもとにした自伝的漫画である。時代は昭和40年ぐらいであり、舞台は北国の町(恐らく北海道と思われる)。ノスタルジックで、抒情性の強い作品である。

抒情性が強いというのはどういう意味か説明しろと言われてもできない。小説でいえば北杜夫の「幽霊」や「どくとるマンボウ昆虫記」、音楽でいえばアリスの「ある日の午後」(アルバム「アリスVI」所収)や小坂明子の「青春の愛」(シングル「あなた」のB面)
に共通するものである。きちんとある現実、あるシーンを描いているけれど、どこか夢物語のような、あるいは過去を思い出させるような、あるいは、体験していない記憶を想起させるような、というか……

ちなみに、キャラクターの好き嫌いでいえば、ルミもマヤも大嫌いである。こういう煩い子は閉口する。現実に目の前にいたら、絶対にお付き合いできない相手だ。もちろん漫画のキャラクターとしてもなのだが、主人公(格)のキャラがキライなのに作品が好きというのも不思議である。涼子さん(母親)の存在に救われているのかも知れない。


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(2020/3/13 記)