鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「若い貴族たち」(その1)

若い貴族たち1

若い貴族たち1

若い貴族たち2

若い貴族たち2

若い貴族たち3

若い貴族たち3

梶原一騎佐藤まさあきと組んだ作品があったとは知らなかった。佐藤まさあきは子供の頃は大人向けの漫画雑誌などでよく見かけたが、いつしか目に触れることがなくなり、存在も忘れていたが、絵を見てすぐに思い出した。女は美人、男はみな目が細くて口元が薄笑いを浮かべているように上向きに歪んでいるこの特徴ある絵柄は忘れようがない。

kindle版が昨年8月の刊である。紙の単行本は恐らくとっくに絶版だったと思うので、電子化されてようやく日の目を見ることができるようになった作品だ。

主人公が女性というのは梶原一騎にしてはとても珍しい。「愛と誠」や「恋人岬」、銀座の女を主人公にした「哀愁荒野」、天地真理というキャラを生んだ「朝日の恋人」など、皆無ではないが、喧嘩・格闘分野となると本作が唯一ではないかと思う。*1

主人公のマキは空手の達人で、彼女に憧れる女と一派を成していて、端的に言えば、対立するグループや彼女らを疎ましく思うヤクザ組織らとの抗争を描いた物語である。

マキは、不良、ズベ公と世間では後ろ指を指されるような人間であるが、心は誰よりも高貴である……ということがテーマである。ただし、未成年の飲酒喫煙はともかく、一般人への脅迫・窃盗なども冒頭から繰り返しており、これを高貴とはとても言えない。こういう世界の中でも筋を通す人と通さない人がいるわけで、そういう「筋」を描いたものである、と言えばわかりやすいか。


漫画・コミックランキング

(2020/4/1 記)

*1:作品リストを見ると「ふりそで剣士」(作画:東浦美津夫)や「おんなプロレス地獄変 女子プロレスラー紅子」(作画:中城健)などもあるが、ともに入手困難である。