鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「1・2の三四郎」プロレス編(その4)キャラクター編

高校を卒業してプロレスラーを目指し、横浜へ移住したので、周囲の人間関係もガラリと変わり、新キャラクターが続々と登場する。師匠格として塚原巧、桜五郎とその妻のコーキー、ライバルとして五頭信、田中敬三、柔道時代からの因縁を引きずって再登場の柳政紀、外人レスラーのザ・スノウマン、ダン・ロビンソンなど……。が、特筆すべきは成海頁二である。

成海は空手の達人で世界大会の優勝候補だったがプロレスに転向。恵まれた体躯から繰り出される当て身技の威力は強烈で、まともにくらうとプロのレスラーでも一撃で失神するほど。もともと新東京プロレスで五頭と並ぶ期待の若手であり、三四郎のライバルになるのかと思いきや、なぜか新東プロをやめてひまわり軍団に移籍してくるのである。

性格はこれまで本作に出て来た誰とも違い、存在感が強烈で、以降、成海は物語の主要なキャラクターになっていくのだが、果たして本作に成海は必要だったのだろうか。三四郎のライバルだというのならわかるが、なんのために彼が味方になったのかがわからないのだ*1

一応、組み技が苦手で転がされたら何もできないことになっており、桜五郎とのスパーリングでは押さえつけられて何もできないシーンがある。が、これは桜ほどのベテランにして初めてできることで、いざ試合で成海を手玉に取れるレスラーはほとんどいないと思われる。

プロレス編の後半では、タッグマッチのトーナメント戦が中心になる。高校を卒業したばかりで体格も中程度の三四郎が、本物のプロと闘って勝ち抜いていくためには強力なタッグパートナーの存在が必要だということなのかとも思ったが、五頭・柳と対戦した時は、三四郎が一人で二人を相手に闘い、成海の出番はほとんどなかった。それだったら、三四郎・馬之助のペアの方が良かったのではないか。

なお、この時馬之助はダンとペアを組みオズマ・ノーランとぶつかるが及ばず、そのオズマ・ノーランに三四郎らが勝つことになるので、馬之助が三四郎の引き立て役になってしまったのも納得がいかないところだ。直接対決ではないし、シングルでもないのだが、これで三四郎と馬之助の格付けができてしまったからである。馬之助は柔道編では無敗であり、あくまで三四郎とは「同格」であった。だから対等でいられたのだが……

これまでは三四郎・虎吉・馬之助の三人がいつでもセットだったが、虎吉が漫画家を目指しプロレスラーにはならず、いつまでも行動を共にするわけにはいかなくなったので、その穴を埋めるべく登場させたのだろうか?(恵まれた体躯、馬鹿力、空手は虎吉と共通する。もっとも、虎吉の空手は素人だが成海は正真正銘の達人である)。

漫画のキャラクターとして面白みがないわけではないが、本作には、少なくともひまわり軍団にはいらなかったと自分は思う。



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(2020/5/21 記)

*1:柔道編では参豪という達人が味方にいるが、三四郎に柔道を教えるために参豪の存在は必須だった。また、三四郎・虎吉・馬之助・参豪の中で体格は参豪が一番小さく、試合で三四郎が勝った稲毛や柳と参豪が対戦して勝てたかといえば微妙である。つまり、格闘部の中の絶対的強者というわけでもなかった。だからよかったのだ。