鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「とろける鉄工所」1

以前、無料で販売されていたため何気なくダウンロードしたが、読み進めて「とてもついていけない」と思い、半分も読まずに投げだしたことがある。しかし、最近になって蔵書の中から本書を発掘し、今だったら面白く読めそうだという気がして読んでみたところ、非常に面白く、一気に読んでしまった。

本にはこういうことがある。その時の気分、テンション、さまざまな要因の何が影響するのかはわからないが、ある時にものすごく面白かったと思った作品が、別の時には手に取る気になれなかったり、その逆だったり。とにかく今は面白かった。ダウンロードしておいて良かった(今でも無料で販売されているようだが)。

作者は長く鉄工所に勤めていたらしく、その時の経験から、「溶接愛」に満ち満ちた人を描いている。

溶接など、自分はしたことがないし、恐らく多くの人はそうだろう。溶接とはどういうものか、どういう道具を使って何をすることなのか、異世界を垣間見ているような面白さがある。これが第一。また、登場人物がなんだかんだいって溶接の仕事に誇りを持っているところがいい。職人気質というのはこういうことかと思うが、それは惹かれることである。

また、たまにまじってくる人情話が泣かせる。というか、ギャグで覆ってあからさまにはしていないけれど、登場人物は多かれ少なかれ人情家である。たまに人情強めのエピソードがあるというわけ。この塩梅は「寅さん」に通じるものがある。ここに惹かれるのだと思う。

それにしても、いわゆるブラックな職場である。休みは日曜のみ、平日も日付が変わる前に帰宅できればラッキー、という過密労働もそうだが、安全性に関して信じられないほど杜撰である。笑っている場合ではないが、それは漫画の中だけの話だと思いたい。


漫画・コミックランキング