鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「宇宙兄弟」38

モーニングは毎週購読していて、しかもずっと保存してあるから、掲載漫画は単行本を買わなくてもいつでも読み返すことができる。事実、本作も時折読み返したりしている。その意味では目新しさはないが、改めて単行本の形で購入し、一気読みすると、また違った印象がある。

38巻は友情物語である。まさかここでケンジと新田が登場するとは思わなかった。が、確かにこの窮地を救うのにこれ以上の適任はいないだろう。

六太のために、ケンジも新田も自分の訓練プログラムを後回しにして協力している。自分の夢やキャリアを考えたら、本来あり得ないし、してはいけないことである。ケンジは同期生で、長く一緒に訓練を受けてきた間柄だからわかる。対して新田は……。実は新田と同じグループで訓練を受けている時、新田のエピソードに時間をかけ過ぎだと少々不満に思っていた。こんな脇役まで細かく書き込んでいたら、話が先に進まないではないか、と。

しかし、あの時新田自身や新田の弟のことをあそこまで掘り下げて描いたからこそ、我々読者は新田を理解し、同情もするし、新田に対する六太の態度を見て改めてリスペクトするし、新田が六太に、一生かけてでも返さなければいけない恩を受けたことを、少なくとも新田がそう考えていることを知ったわけである。そのエピソードが今生きたわけだ。あの頃、ここまでストーリーの展開を考えていたのだろうか?

解決策は簡単ではなく、ケンジも新田も苦労するが、「南波の気持ちになって考えよう」としたあとで解決策を思いつくところが見事である。

そうしたシリアスな展開に合わせて、ムラサキのイタズラ、カルロの自己陶酔などのユーモアが絶妙に絡みつく。相変わらずすごい作品である。


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