鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

ついに(第一部が)完結「アシガール」12

あらすじ

若君とともに永禄へ戻った唯は、緑合城への道のりは新婚旅行だと(平成の世では常に家族が一緒でハネムーン気分が味わえなかったので)浮かれる暇もなく、敵に追われ、逃げまどう羽目になる。

阿湖は、忠清に嫁ぐために黒羽にきたものの、縁談が潰れ、本来はすぐに松丸に帰るべきところを成之に引き留められ、そうこうしているうちに織田に攻められて城を失い、羽木家と一緒に緑合へ向かうことになる。あの時すぐに松丸に帰っていればと侍女に文句を言われたが、松丸も織田に攻められてあっという間に降伏し、阿湖の両親は追放され、兄は人質になったと聞いて、羽木と一緒に行動してよかったと改めて思った。

緑合での居候暮らしは黒羽での生活に比べ大変ではあったが、侍女にかしずかれる生活よりも他の人と一緒に仕事をして汗を流し、足りないものを分かち合う生活の方がはるかに楽しいと。落ち着いたら成之との縁談も進むだろうし。と思っていた矢先、織田の家臣との縁組みの話が出て戻るようにとの指示が出た。それを嫌がる阿湖は、唯之助の行動力を見習い、成之に一緒に逃げようと誘う。成之は、先の見えない自分の嫁になるより飛ぶ鳥を落とす勢いの織田の家臣に嫁いだ方が阿湖にとってはよいのではと身を引くつもりだったのだが、阿湖の気持ちを聞いて改めて阿湖を嫁にしようと決意し、忠高も許可する。

そんな矢先に唯が忠清を連れて緑合にやってきた。羽木家は一同あげて歓迎。さてそれからは大団円に向かって一直線。改めて婚儀をあげ、初夜を迎える。ようやく唯の腹も固まったのだ。

阿湖(緑合城にて)

「(成之は)出会った頃に比べるとずいぶん穏やかな顔をお見せになる。やはりもともとお優しい方なのだわ」

阿湖&成之

成之「姫はこの成之には過ぎたお方、生涯をかけてお守りいたす」
阿湖「し……しゃっ」

雑感

前半の阿湖のfeaturingパートが面白かったし、非常によい伏線回収になっていた。しかしどうしていいかわからなくなった阿湖が、「唯之助ならばどうしたであろう」と考えるたびに茶々が入る。作者までがト書きで「阿湖姫……あれをお手本にしてはいけない……」と言い出す始末である。

忠清が永禄四年に亡くなったとされていたのは、唯とともに平成へ移動し、消えた忠清を死去として扱ったためだが、その後羽木の名前が資料から消えるため、羽木家が滅びたと思われていた。が、それは羽木忠高が御月家の養子となり、名前が変わったため。「羽木」は滅びたが羽木家の人は御月となって生き永らえたということがわかる。その跡継ぎの清永は天野から嫁を娶っているので、これが忠清と唯なのだろうと速川家の人はわかる。唯と忠清は乱世を生き延びて7人の子を成したのだ。

それにしても見事な最終回だ。わーっと盛り上げておいてちゃんと落としてもくれる。これほどよくできた最終回というのはちょっと記憶にない。「研修医ななこ」の最終回も好きだけどね。

最終回を迎えた後はアシガールロスに陥るが、そのあと番外編がたっぷりついており、ちょっと気になっていたところをちゃんと補ってくれているので(特に吉乃は最初は天野信近のプロポーズを断っているはずだが、次に唯が戦国に戻った時には既に結婚していた。この間に何があったのかは誰もが気になるところ)ありがたく堪能できる。

なお、後書きによれば、11巻にも後書きがあったようなのだが、少なくとも電子版には収録されていない。この作者の後書きは面白いので、機会があれば確認したい。

これで当初作者が構想していた内容は終わりだが、続けて第二部が始まり、それは今の連載中である。まあ、そのように引っ張った漫画はたいていろくな結果になっていないので、続きを読もうかどうしようか迷っている。


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