格闘技や喧嘩がすごく強い人が登場する漫画で、その人が人間以外の動物と戦う、というのは珍しくない。ボクシング漫画に限っても、「あしたのジョー」では力石徹が豚や牛を、「がんばれ元気」の関拳児や「はじめの一歩」の鷹村守は熊を、素手で殴り倒している。
漫画だから構わないのだけど、現実には、人間はたとえボクシングの世界チャンピオンであっても、豚や牛や熊を殴り倒すことはできないだろう。
大山倍達の「大山カラテもし戦わば」という本を僕が気に入っているのは、人間が動物と戦う場合、勝敗のルールをどうするかが問題で、広い場所で戦い、相手が逃げる素振りを見せたら勝ちとすべきだ、と主張している点にある。そういうルールにしないと、人間には勝ち目はないというのだ。窮鼠猫を噛む、という言葉があるが、逃げ道のない閉鎖空間で追い詰められたら、犬や猫でも死に物狂いで反撃する、そうしたら人間は勝てない、という言葉にリアリティがあった。
相原コージは、本作では動物対動物の戦いを描きたかったのだと思うので、人間があるところまで勝ち上がっていくという選択はもとよりなかったのだと思うが、人類最強の人物が、さして凶暴とも思えないカバに、いいところなくあっさり殺されてしまう展開は、クールでよいと思った。
第二巻は、次の対戦が描かれる。
- ナイルワニ(クロコダイル科) vs サバンナシマウマ
- アフリカスイギュウ vs マウンテンゴリラ(途中:3巻へ続く)