動物対動物の格闘を描くというのは、恐らく想像を絶する難しさがあるのではないかと思う。動物は、単に気に入らないとかいった些細な理由で喧嘩をしたりしない。もちろん武道スポーツとしての格闘などというものはない。争うのは捕食者と非捕食者だが、これの勝ち負けは決まっていて、しかも多くの場合、一瞬で勝負は決まるはずである。そして、食べない者同士は争ったりしない。つまり虎とライオンはどちらが強いのか? 興味はあるが、強さを求めて争ったりはしないのだ。もちろん、生息地域が違えば出会うこともない。
現実なら争うことのない二人(二匹)が戦ったらどうなるか、という設定は、漫画だからできるのだが、だからこそ戦い方にリアリティを持たせないと単なる荒唐無稽な話になってしまう。誰もが納得する展開でなければならないし、意外性も持たせたい。そこに漫画ならではの作り込みもしたい、となると、二律背反、三律背反みたいなものだが、本作ではそれが見事にバランスされている。
第一巻の「アナコンダ vs ヒクイドリ」は、意外な結果となったが、そういうことならそうかも知れないという説得力があった。また「インドサイ vs ライオン」は、やっぱりねえという結果だが、震えが来るほどの迫力があった。
第二巻は漫画的な作り込みが大きくなされている。「ナイルワニ(クロコダイル科) vs サバンナシマウマ」のシマウマはスクワットなどの過酷なトレーニングを自らに課し、並みのシマウマより強くなっているし、「アフリカスイギュウ vs マウンテンゴリラ」のゴリラに至っては、柔術を身に着けた「黒帯」なのである。
これだけ書くと荒唐無稽な話だが、世界中に生息しているはずの動物が、船にも飛行機にも乗れないのに一箇所に集まり、動物語とかいう共通言語で意思の疎通をし、なんの得にもならない「地上最強」を賭けて選手が争い観客が熱狂する、ということが許容される世界においては、十分あり得ることのように思われる。
第三巻は、次の対戦が描かれる。