鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ちゃんと描いてますからっ!」1

かすかに読み覚えがあったので購入。

平原大地は月刊誌に連載のあるひとかどの漫画家であるが、実は毎回、下書きだけまたはネームだけ作って逃亡してしまう。逃亡した後はどうなるかというと、仕方なく、中学生と小学生の娘(歩未、空)が二人がかりでペン入れをして仕上げるのだ。原稿が落ちると収入がなくなり、生活できなくなると思っているから(事実、その通りなのだろうが)。娘たちの母親はいない。離婚か死別かは不明だが、だから彼女らは家事もやらなければならない。

一応、あかねちゃんという平原大地を崇拝しているアシスタントがいて、彼女は事情を承知しており、ペン入れの段階になると背景などを手伝うだけでなく、料理・洗濯などの家事、そして編集者とのやりとりなどを引き受けており、そのおかげで表面上はかろうじて平和が守られている。

そう、編集者は、作家本人がおらず、代理人が仕上げていることを知らないのだ。

なんという漫画か、タイトルも作者名も忘れたが、人付き合いの悪い人気漫画家が急逝してしまい、担当編集者が事実を隠蔽、ストーリーは自分が考え、絵はアシスタントに描かせて連載を続ける……という漫画があった。莫大な印税収入をこっそり山分けしようという意図もあったが、作品を中途半端で終わらせたくないという気持ちもあった。いずれにしてもやっていることは詐欺である。

本作では、家族だから、収入をを騙し取ったわけではないし、作家も少なくとも毎回、編集者と打ち合わせをしてネームを切っている。そして歩未のペン入れや空の仕上げ技術はプロのレベルに達している、ということになっている。この場合、真相を出版社側が知ったらどういうことになるだろう? 

漫画家のことを描いた漫画であるというメタ的な話、平原の作品名が「だびんちゲーム」だったり、いろいろとネタが仕込まれているし、ギャグありろまこめありで、見ようによってはなかなか楽しい作品なのであるが、ちょっと生理的に耐えらえず、1巻でドロップ。

父親が働かず、中学生と小学生が働いて、そのため部活もできず、授業中も居眠りをしてしまったりと、これはもう児童虐待に他ならない。歩未のペンタッチは既に父親を超えているからスゴイ、とか言っている場合ではない。

この先どういう展開が待っているか知らないが、一刻も早く歩未や空が漫画を描かなくてもよくなり普通の中学生生活、小学生生活を満喫できますように。



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