- 黒谷知也「幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい」
「書店員波山個間子」の原型になる短編が載っているというので購入してみた。2014年に小学館IKKI新人賞単行本描きおろしを受賞し出版された、著者の第一短編集。kindle版は個人で再編集したものだとのこと。
短い話が多い……短編集だから当たり前だけど、起承転結になっていなくて、起承だけのような作品が多い。あるシーン、ある雰囲気をとらえた(だけ)の作品というか。アマチュアの同人誌などではよくあるが、目の付け所は素人離れしたものを感じる。マンションが火事になり、近所の人がみな自分のマンションを見上げているから様子がわかるのだろうが当のマンションの住人が何が起きているかわからない不安……を描いた話などは秀逸だと思う。
「書店員波山個間子」はなるほどのちのダイジェストのような作品で、これを描き直してあれになったわけね……
一番印象に残ったのは「谷後先生」だ。作者は読書がすきだったんだなあと思う。