鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「からかい上手の高木さん」5

第一話がいきなり衝撃の展開である。なんと10年後の高木さんは結婚して子供がいて西片姓になっていた! 夢オチか何かかと思ったがそういうわけでもない。なんで突然一話だけ10年後になったのかは謎で、非常に唐突な印象を受けるが、あー二人は結局そこへ行き着くんだなと思ったら、あとは二人が何をしてもただのバカップルのそれである。安心して眺めていられる。

もしかしたら、作者からの、この先二人は、仲違いして修復不可能な亀裂が生じることも、ライバルが登場して心を奪われることもなく、順調に仲良くなって結ばれるんですよ、というメッセージなのかも知れない。

一般に恋愛ものというのは、ライバルが登場して、もしかしたらこの人のことを好きになっちゃうんじゃないかとか、トラブルが起きてこれで別れちゃうんじゃないかとか、そうハラハラさせて読者を引っ張るのが常道なのだが、これはその逆である。何も起きないから安心して見守ってください、と。

第二話以降も、一緒に水着を買いに行ったり、一緒にプールに行く約束をしたり、単なる友達の域をはるかに超えた付き合いになっているが、とにかくこの巻はこの話に持って行かれた。

追記

第9話について触れなければいけなかった。放課後、男子の友人が西片に一緒にゲームをやろうと誘いに来るが、西片は高木さんと一緒に帰るからと断わってしまう。高木さんの、ゲームよかったの? という質問に「高木さんと帰りたかったし」と答える。真意は、今日なら高木さんに一泡吹かせられるのではないかという根拠のない確信があって、その機会を狙っていたからなのだが、それを聞いた高木さんは、西片と別れた後、急に顔を真っ赤にし、胸をドキドキさせる。これまで何が起きても動揺したことのなかった(あるいは、動揺を顔に出さなかった)高木さんが初めて見せる顔である。西片は知らない、知っているのは読者だけなのだが。



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