- 艶々「はだかのくすりゆび」3(日本文芸社)
マヤが留学し、子育てから解放された翠は、ユキトとの行為にのめり込む。
ユキトは、会ってひたすら行為に励むだけの関係に疑問を感じるようになり、しばらく会うのをやめることに。
そんな矢先に、翠は妊娠したことを知る。誰にも相談できず、ばったり会ったヒデに打ち明ける。ヒデは知り合いの産婦人科を紹介し、翠は堕胎。健康を回復した翠はお礼と言ってヒデと食事に誘い、ヒデと関係を持つ。
ガツガツ求めるだけのユキトの行為に対し、ヒデのそれは内面を裸にするようなやり方であり、翠はのめりこんでしまう。
夫が愛人に小遣いをねだられ、まとまった金を渡そうとしているのを知り、「そういう人がいてもいいけど、お金でつながる関係は卑しいもの」と嫌味を言ってしまう。夫は逆上し、とっくに枯れた女が男と女を語るなと怒鳴る。翠は「枯れてますか? 私、まだ子供生めるんですよ」と言い返す。
ある日、帰宅した夫は、家で翠がヒデを致しているのを目撃してしまう。自分の妻が、たいそう色気のある、淫らな女であったことを知り、ショックを受ける。現場に踏み込む勇気はなく、とにかく落ち着こうと水を飲むと、テーブルの上に結婚指輪が置かれていることに気づく。夫も自分の左手の薬指から指輪を抜き、そこへ置いて家を出ていく。
という物語である。
翠がユキトだけでなくヒデとまで関係を持つことに驚く。わざと娘が付き合っていた男を選んでいるというより、これは翠の交友範囲の狭さを表わしているのだと思う。要は世間知らずなのだ。
そして最後、自分の行為を夫に見せつけるところがすごい。夫は愛人宅に行く予定の日だから、夫の帰宅は計算したものではないだろうが、夫が覗いていることには気づいていたはず。しかし妻の不貞を知っても二人の間に入って文句を言う勇気がないことも、翠にはわかっていたようだ。
「はだかのくすりゆび」は「結婚指輪を抜いた指」という意味。