前半は高松城攻めが描かれる。ちょうど真ん中あたりで本能寺の変が勃発。それからは毛利との和睦交渉と大返しだが、この時の毛利との交渉は、結果がわかっていても手に汗を握る場面だ。戦国末期のハイライトといえよう。
さて、最後の数章は、信長を打ち取ったあとの光秀が描かれる。これ! この10日間は「麒麟がくる」では全く無視されたが、明智光秀の物語を書くなら絶対に落としてはいけないと自分が考えるところである。
本作で描かれている光秀の誤算:
- 信長の遺骸が見つからない
- 信忠の遺骸も見つからない
- 混乱する京の町が鎮まらない
- 勢多の大橋を焼け落とされる(そのため安土城の制圧に向かえない)
- 誤算中の誤算、細川藤孝、味方せず
- 筒井順慶、期待持たせて味方せず
- 最大の誤算、秀吉の早過ぎる大返し
内応する味方を事前にきちんと作っておかなかったのは問題だが、人に話すと謀反が漏れてしまう恐れがあり、難しいところだ。とはいえ、光秀の実力や立場からすると、主だった大名が誰一人味方しなかったのも不思議。せっかく朝廷を味方につけたのだから、安土城などほっといて、京にとどまって周囲に見方を増やす努力をすべきだったのではないか……
この10日の間、光秀が何を考え、何を狙って動いていたのか、そこに光秀の人生が集約されていると思うのだ。
というわけで、戻ってきた秀吉と光秀がにらみ合うところで3巻終了。