「アオイホノオ」の主人公は焔燃(ホノオ・モユル)だが、これとシンクロする炎尾燃(ホノオ・モユル)という人物が、漫画家になってからを描いた作品があるということを知り、読んでみたくなった。発表は1990~1991年で、「アオイホノオ」の連載開始(2007年)より20年近く前の作品である。
「アオイホノオ」は冒頭でいきなり「この話はフィクションである」と断わっているが、本作は最初の方に「すべてのマンガ家がこうだと思ってもらいたい」のように書かれている。
YouTubeで岡田斗司夫に、なんでより実話に近い「アオイホノオ」ではフィクションだとわざわざ断わっているのに、本作ではこんなこと言ってるの? と突っ込まれた島本和彦は次のように答えている。
「燃えよペン」はマンガ家漫画なんだけど、これまでのマンガ家漫画といえば「まんが道」。あれは巨匠の自伝なわけですよ。自分は代表作もない漫画家で、そんな自分が何を描けるのか? といったら、すべてのマンガ家がこうだと断言するしかない。
しかし僕の印象では「マンガ家漫画」は世の中にあふれている気がする。自分の実体験は多くの漫画家にとって描きやすいネタのはずなのだ。パッと思いつくのは小林まことの「マンガの描き方」とか、まあ小林まことは既に「1・2の三四郎」という代表作があったけど……。吾妻ひでおの「わたしはこうして漫画家した」とか、まあこれは独立した作品ではないけど……。あとは、とり・みきも3~4回の短い連載で「漫画の描き方」的な作品を描いていた(正確な題名と収録された単行本は思い出せない)。これらは虚実入り混じったギャグマンガとして昇華されていた点で共通する。
島本和彦は「ほかにないですよ、こういう作品」と言っていたが、本作は上記の系列の作品であるように思う。
まあ、島本節炸裂で、面白いことは面白い。ただ、事実に即したエピソードもあるらしいが、思い当たるものはなく、自分にとっては単にフィクションとして面白いということである。