本作の魅力は、登場人物がいい人過ぎない点にあるのではないか。特に作者の分身と思われるみかんは、結構イヤな奴である。
例えばNo.3で、クラスメートのゆかりが朝あわててブラをつけるのを忘れて登校してきたことを知ったみかんは、(作品中では特に口止めはされていないものの)面白がって彼女がノーブラなことをほかの人に喋ってしまう。そしてゆかりから分句を言われ、「たいしたことしてないのに、ゆかりコワイ」としみちゃんに愚痴る。
しみちゃんは結構まともな人だと思っていたから、「みかんさー、喋っていいことといくないことの区別くらいしなよー。ゆかりが怒るのは当たり前でしょ」くらい言ってくれるかと思ったら「結局アンタたいして悪いことはしてないよ」と言うのだ。
要は、みかんもしみちゃんも普通の人なのである。こういうヤツ、いるよな、と思ってしまう。そう思うと実在感が増してくる。お父さんとお母さんの突き抜けぶりは常軌を逸している部分もあるが、ちょっとおおげさに描いているだけで、うちの親も似たところあるな、と思う人は多いのではないか。
ただし、弟のゆずひこはあまりマイナスポイントがない。ちょっと内気なところはあるけれど、かなりかわいく描かれている。こうした点は「エデンの東北」(深谷かほる)、「ひまわりっ ~健一レジェンド~」(東村アキコ)と共通する。みな、弟のことがよほど可愛いのであろうか。