鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「ゴルゴ13」1

内容

  • ビッグ・セイフ作戦
  • デロスの咆哮
  • バラと狼の倒錯
  • 色あせた紋章

雑感

ビッグな作品の第一巻。第一話が雑誌に掲載された時に読んだ人は少なく、恐らくほとんどの人は、いつの間にか「ゴルゴ13」を知るようになり、じゃあ単行本を一巻から読んでみるか、となって読んだであろう。そして、自分の知っているゴルゴと顔も性格も能力もかなり違うので戸惑ったであろう。

メタ的に言うならば、キャラクター造形が最初から完璧ということはなく、話数を重ねるに従って徐々に固まっていくのは当然ではある。作品の中に入り込んだ立場で言うならば、ゴルゴも若い頃は血気にはやっており、ミスもあったということであろうか。

ビッグ・セイフ作戦

とにかくミスが多い。コトが終わったあと、窓際に立って外を見ていたところ、相手の娼婦が後ろからそっと近づいてきて、ゴルゴは反射的に彼女を殴ってしまう。彼女が叫び声をあげ、人が集まってきて……というところから物語が幕を開ける。

背中に立つ者は誰でも反射的に殴りつけてしまうという彼の習慣を知ることになるが、エージェントでも何でもない、ど素人の娼婦に手が届く位置まで近寄らせてしまうこと自体がそもそも失策。また、殴るなら声を立てずに失神させるべきで、人が集まるほど大声をあげさせてしまうのも殴り方が下手。さらに、本気でその場を逃げようとしたにも関わらず、警察につかまり、刑務所へ入れられ一ヵ月を浪費した。一日や二日ならともかく、一ヵ月は致命的で、普通ならそのような間抜けには二度と依頼が来ないところだろう。それを挽回したのは立派だが、まあ屋根に爆弾を落とされるような被害を受けながら、修理に来た初対面の技師を信用し、修理するところを誰も見張らないような相手である。間抜けぶりではターゲットの方が一枚上だったか。

このころのゴルゴは、よく笑うし、あまつさえ冗談も言う。お金を受け取って「領収書はいらないだろうね?」とか、「あれで生き返ったら、もう二度と殺すことは考えないことだな」とか。

デロスの咆哮

捕らわれた後の脱出劇が見事。

バラと狼の倒錯

最初にターゲットを狙おうとした時に、男のはずなのに女だ(とゴルゴは判断した)から狙撃を中止し、謎の解明にたいへんな手間暇をかけることになるのだが、そもそもこのゴルゴの判断が間違っていて、最初に狙った相手が正真正銘のターゲットだったというだけのこと。ゴルゴが余計な判断をしなければ、冒頭の数ページで終わっていた物語だ。

色あせた紋章

ハンガリー秘密警察(AVO)に捕まった時に、「それが上官に対する態度か!!」と怒鳴りつけて信用させてしまう演技力は見事だが、当時のゴルゴはまだ20代だったと思われる。それでセルゲイ少佐より上官を装うのはいささか無理があったのではないだろうか。


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