鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「キャラ者」

  • 江口寿史「キャラ者」1(アクションコミックス)

1998年より「週刊漫画アクション」にて連載された作品。「江口寿史の爆発ディナーショー」(1988)や「エイジ2」(1991)よりさらにずっとあとの作品で、絵柄がまた変化している。

例によって十数回か二十数回続いたところで尻切れトンボで終わり、他の短編をかきあつめて一冊の本にしたのかと思いつつ読んだのだが、いつまで経っても終わらない。最後まで「キャラ者」だけの本だった。驚いた。いや、「すすめ!!パイレーツ」や「ひばりくん」の頃だったら驚きゃせんが、今の先ちゃんにそれができるとは。で、本書は一巻であり、なんと単行本は三巻まで出ているという。もっとも、作品自体は毎回1ページなのに表紙にも1ページ割いていて、ちょっと(いや、かなり)水増ししている感がなくもない。とはいえ、本書には96回分が収められている。これはすごいことである。

主人公は「キャラ者」ということになるのだろうが、それを養っている野崎多美という女子大生が一番出演時間が長い。が、この少女、とにかく顔が可愛くない。江口寿史の漫画で主人公格の女性キャラが可愛くないとは、別の意味で驚きである。まさかこの時代の江口寿史は、こういう顔を可愛いと思っていたのだろうか? しかし通りすがりの看護婦さんなどに美人はいるから、嗜好が変わったというわけでもなさそうだ。森下裕美みたいに、可愛い子を描くよりわざと可愛くない顔を描くことに意義を見出すようになったのか?

いろいろと内輪ネタも多いが、掲載誌であるアクションの編集長に、登場人物の口を借りてこんなことを言わせている回がある。「つぶれそうになると『花の応援団』が、落ち目になると『クレヨンしんちゃん』が(中略)なぜ双葉社には要所要所で神風が吹いてもち直すんですか!?」

僕は若い頃から、この逆を疑問に思っていた。ここで名前が出てきた「嗚呼!!花の応援団」や「クレヨンしんちゃん」だけでなく、昔から「子連れ狼」「同棲時代」「博多っ子純情」「じゃりン子チエ」「がんばれ!!タブチくん!!」、さらに国友やすゆきの「幸せの時間」とか相原コージの「かってにシロクマ」とか……、世間を席巻した話題作、人気作が次々と、本当に次々と出ているのである。それなのに、掲載誌である「週刊漫画アクション」はなぜにメジャーではないのか? と……。

ちなみに、こうの史代の「この世界の片隅に」や森下裕美の「大阪ハムレット」も「週刊漫画アクション」掲載作品だ。


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