雑感
本巻は第二話以降が連作短編になっている。正直、話が複雑過ぎてわかりにくい(と思っていたが、今回感想を書くためにていねいに読み返していたら、ようやく意味がわかった)。
雪は黒いドレスの肩に
ストリッパーのロージィはヒモのジョニィにむしり取られ、悲惨な生活を送っているが、同じアパートに住むエドに慰められているうちに愛が芽生える。ジョニィが悲惨な死を遂げたのを機にエドとの結婚を決意。が、このエドはKGBの工作員で……
不幸ばかり呼び込んでしまう哀れなロージィ。極めつけは、結婚式の日に夫を射抜かれたこと。が、ロージィは知らない。この夫は新婚旅行先で自分を売り飛ばすつもりでいたことを。実は命を助けられるという最大の幸運に見舞われていたのだ。
アラスカ工作員
アラスカにあるCIAの基地から連絡が途絶え、調査に赴いた調査員もすべて行方不明に。KGBの工作員「隼のイエス」に壊滅させられていたのだ。CIAは隼のイエスを倒すため、ゴルゴを派遣する。ゴルゴはイエスを倒すが、ゴルゴが来るという情報が漏れていた。
同業者対決。相手の土俵で勝負しているせいもあるが、ゴルゴが割と苦戦する。ところでKGBはゴルゴがくるという情報をキャッチし、イエスに、ゴルゴと戦う必要はないと連絡する。その連絡を受ける前にイエスはゴルゴに斃されていたが、もし死ぬ前にこの情報を受けていたら、イエスはどうしたであろうか。
鎮魂歌に牙を
ゴルゴを回収に来たCIAの連絡員がダブルエージェントだった。輸送機はシベリアへ向かう。到着後、ゴルゴはダブルエージェントを殺し、迎えに来たKGBにダブルエージェントの名を名乗る機転を利かせたゴルゴだが、実はその男はトリプルエージェントであり、KGBから逮捕状が出ていた。
エージェントを名乗った男の正体がゴルゴ13だと見抜いたKGBは彼を釈放。ゴルゴはKGBの工作員とともにブラジルへ行く。脱出ルートと言われるが、釈放してくれればゴルゴは自力でどこへでも行くのではないか。仕事の依頼を受けた様子も金を受け取った様子もないが、言われるままにブラジルへ行くのは謎。釈放してもらったことへの礼のつもりか?
リオの葬送
KGBの工作員マイヤとともに、まずロンドンへ行ったゴルゴは、そこでテレビ電話でKGBのシャハリン、CIAのフーバー、MI6のヒューム、フランス情報部のオマイリー、日本の内閣秘密調査室の石渡の5人から共同で、ブラジルに潜むナチスの残党・ワルターの狙撃を依頼される。各国10万ドルで合計50万ドル。
コーヒー成金の夫婦を装ってブラジルで活動を開始するゴルゴとマイヤだが、マイヤが何者かに襲われ、殺される。
仕事の依頼は直接会って、を鉄則にしていたゴルゴだが、テレビ電話ごしというやり方を初めて受け入れる。まあ、KGB、CIA、MI6、フランス情報部、内閣調査室のメンバーが一堂に会することは不可能だから、情状酌量したか。
ナチス鉤十字章は錆びず
敵方の工作員ヒルカを手なづけて基地の場所や装備を聞き出したゴルゴは、ヒルカを全裸で公道に放り出す。マイヤの仕返しのつもりか? ゴルゴが感情的になるとは珍しい。
重装備をして基地を襲ったゴルゴだが、タッチの差でワルターには逃げられる。涼しい顔で「始末はまだ、つかなかった」などと呟いているが、取り逃がしたのは初めてではないか?(どうせ追いかけるから、ということなのだろうが)
ラ・カルナバル
元コーザ・ノストラのカルロスに武器の調達を依頼していたが、今回はリオの人ごみの中からワルターの捜索をカルロスに依頼。そのことは敵に察知され、カルロスは拷問に遭うが、ゴルゴのことはしゃべらず。最後はワルターと一対一の対決となる。
カルロスとやけに仲が良かったようだが、いったいどこで知り合ったのか、いや、どうして仲良くなれたのかは謎。表面的に仲がいいというだけでなく、拷問に屈しなかったという点でカルロスがいかにゴルゴとの信頼関係を大切にしていたかがわかる。
カルロスの死を見届けたゴルゴは、ベッドの上に手を組ませて寝かせるなど、敬意を表しているが、こういうのも珍しい。前章での暴れっぷりはマイヤの報復という意味が込められていると考えると、マイヤに対して通常以上の感情を抱いていたことを匂わせている。この一連の作品の特異な点はそこに尽きる。
10巻まで書いてみたが、疲れた。いったん終わりにする。