鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「おひとり様物語」1

「Beth」2007年Vol.1~6、「Kiss」2008年No.5およびNo.9に掲載された作品。一話完結の短編、全8話。

電子版のつんどく本で、購入はずいぶん前のはずだが、読みそびれていた。実はこういう本は意外に多い。

ふと中を読んでみて、引き込まれた。なんでこの作品をずっと読まずにいたのだろう。

第一話の主人公は28歳の女性である。休みの前はお酒を飲みながら寝落ちる直前まで好きな本を読み、休日はゆっくり起きて映画を見たり買い物したりと、一人暮らしを満喫していた。が、職場の後輩から「それってさみしくないんですか」と言われて動揺する。「友達いないんですか?」と訊かれて「なぜ彼氏はと尋ねない?(いないけど)」とずれた怒りを抱えたり。

買い物していて迷った時にどうするのか、一人で食事して退屈しないのか、と疑問に思う後輩は幼いし、それを口にするのは失礼に過ぎるが、訊かれた方も、本当に自分の生き方に満足していたら堂々としていればいいのだが、つい動揺してしまう。この心境はとてもよくわかるのだ。

僕は酒は好きでよく飲みに行っていたが、ほとんどは一人飲み。それは、差し飲みも楽しいし大勢でワイワイやるのも楽しいが、いつでも付き合ってくれる相手がいるわけではなし、一人の時は自分のペースで過ごせるからそれはそれでいいのだが、そういう話をすると「え、一人? それってさみしくない? 友達いないの?」などと言ってくる人がいるもんだ。そう言われると、9割ぐらいはムッとするけれど、1割くらいはうしろめたく感じたりしてしまうのだよ。

ところでこの話はそれで終わらない。その後輩君は、ひとりゴハンをしてみるのだ。そうしたら「自分で選ぶ」のは気持ちいいと気づく。そして主人公に電話し、先輩がイキイキしているのがわかりましたと言う。とても後味の良い作品だ。

本作の「おひとり様」は、独身・パートナーなしのほかに、パートナーはいるけれど物理的に離れている(遠距離とか)、パートナーはいるけれど心が離れている、なども含まれている。そして(今のところ)全員女性である。

続きも読んでみたい。


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