鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「僕はまだ野球を知らない」4

  • 西餅「僕はまだ野球を知らない」4

センバツ出場校と練習試合を行ない(Bチームだがセンバツで投げた投手が完投した)、4点差を追いついて引き分けに持ち込む。着実に力をつけてきたのだ。が、選手はもっと喜ぶかと思ったら悔しがるばかり。宇佐は言う。「どんな圧倒的な強豪にも攻略の糸口があることを知ったとしたら……」。自分たちでもやればできるかも知れないと本気で思い始めたのだ。

投手の水巻は気が弱く、これまで「あの蚤の心臓を何とかしない限りマウンドには立てない」と言われ続け、本人もそう思い込んでいた。が、宇佐監督は「弱気は悪いことでしょうか?」と言う。「弱気を悪いことだと思い、委縮するのが問題なのであって、怖いことを認める。弱気になっていることを認める。自分を受け入れてあげればいい」というアドバイスには驚く。これで水巻は立ち直ったのだ。

後半、この監督はもっとすごいことをやりだす。他の都立高校に案内を送り、自分らの練習方法を公開することにしたのだ。強豪校にとって都立が「コールドしてエースもスタメンも温存できるラッキーな相手」ではなくなっていけば? 短い練習時間でも合理的な手法が確立し実際に強くなれば、進学のために野球を諦めていた人の入部も増えるかも知れない。根性論の悪しき側面を駆逐してくれたら子供たちの野球離れも防げるかも知れない。素材の差などと決めつけず、どんな挑戦もどんな失敗も許されると伝えれば子供たちは縮こまっていた手足を伸ばして大きく成長するのではないかと。

賛同校が対戦相手のデータを共有することによって互いの勝率を上げていくというのは、可能性としてはありだろう(おのような行為が許されるのかどうかは知らないが)。だが宇佐監督の(そして作者の)狙いは後半にあるのではないかと思う。これはセイバーやトラッキングシステムとは本来は別の話だ。ただし「根性論ではない合理的な練習」という点で両者は重なり合うのかとも思う。

ところで冒頭で監督がベンチにいる水巻に「準備はいいですか?」と訊くシーンがある。水巻はもちろん「はい」と答えるのだが、準備のいいリリーフピッチャーはブルペンにいるのではないだろうか?



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