鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「僕はまだ野球を知らない」5(最終巻)

  • 西餅「僕はまだ野球を知らない」5

宇佐監督の呼びかけに賛同する学校が出てくる。夏の大会では、協力校のひとつが強豪校に対して粘りを見せ、結局は負けたが、その時のデータを活用して浅草橋工は勝利する。他にも強豪校に勝つ都立高がチラホラ……今年の都立には何かが起きている!? と一部の記者が気づき始めたところでまくを閉じる。

話はこれからなのに終わりとなったのは、恐らく人気がなく「打ち切り」になったということだろう。これを面白がれといってもなかなか難しいのは想像がつく。しかし、いつの日か、必ず再評価される時が来ると思う。編集部が、これは社会的な意義のある作品だから、人気は低調でも連載は続けよう、と腹を決めてくれればよかったが。

合同トレーニングをした時の他校の生徒のセリフ。

「宇佐監督っていいですよね、めっちゃ褒めてくれて。やる気出るっつーか、正直、浅工うらやましいっす」

吾妻(三年生)のセリフ。

「前監督がやってたことって、野球部ならまあ、あるあるじゃん。体罰とか懲罰交代とか連帯責任とか。リトルもシニアもそんな感じだったし、ムカつきながらそういうもんなんだろって諦めて。でもさ、そういうもののせいで少しずつ、うすく、野球を嫌いになっていくこともあるだろ」

「宇佐監督が求めるレベルは高いから練習は大変だけど、精神的なきつさはないじゃん。しごきとかなくても普通に野球はできるんだなって。それで強くなれたらこんなにいいことはないなって。宇佐監督みたいな監督がもっと増えるべきなんだ」

原崎先生のセリフ。

「中学の野球部やシニアで、自尊心を削られて、潰れそうになっていた選手たちが、監督のもとで少しずつ自信を取り戻して、今ここで再生し始めているのを見て、俺はできる限り宇佐監督をサポートしようって決めたんだ。好きなことがある人間は幸せだよ。好きなことがある人間が増えるのはいいことだ」

これは野球だけの話ではないなと思う。先駆的な作品過ぎた。



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