鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「キックの鬼」2

梶原一騎の作品のひとつの大きな特徴に「必殺技」の存在がある。矢吹丈ならクロス・カウンターやトリプル・クロス・カウンター、星飛雄馬なら大リーグボール、タイガーマスクならウルトラタイガードロップやタイガーV。柔道一直線なら地獄車や二段投げと枚挙に暇がない。

梶原一騎以前に必殺技が皆無だったわけではないだろう。姿三四郎にも山嵐という必殺技があった(山嵐は実在の技だから「得意技」というべきか)。しかし必殺技の威力を満天下に知らしめたのは梶原一騎の功績ではなかったか(功罪あるが)。以後は「サインはV」におけるX攻撃をはじめ、多くのスポーツ漫画で必殺技が目白押しとなる。それを究極まで推し進めたのが「リングにかけろ」だろう。何しろどんな技なのかほとんど説明がなく、技の名前を叫んで手を突き出すと、相手がケシ飛んでいくのだから。

スポーツには、ルールの元、長い間に磨き抜かれた数多くの「技」が存在する。どのような状況でもその「技」が出せるように磨き抜いていくのが重要であり、何もこれまでになかった技を開発すること「だけ」が相手に勝つ道ではあるまい。また、仮にそのような技があったとしても、ここぞという場面でたまにやるから効果が出てくるので、毎試合披露していては、パターンを読まれ、かわされやすい。かわされ、防がれたらまた新しい必殺技を開発する……というのは荒唐無稽である。

ただしウルトラマンにおけるスペシウム光線のように、見る側からすれば独自の必殺技があって、毎回それで勝つ、というのはわかりやすいのは事実だろう。

本作は一応ノンフィクションの建前であり、真空飛び膝蹴りは実在の技だったようだが、「重力に逆らう」とか「真空地帯を作り」とか、技の開発にあたっては梶原一騎らしいけれんみにあふれている。

そういえば昔、沢村がインタビューで、試合を見に来たお客様は漫画のように高く飛ばないのでがっかりする人が多い、と苦笑いをしていたことがあった(という記事を読んだ)。

対戦相手

  • バイヨク・ボーコーソー(ナイフで刺しても肌に傷がつかない鉄人)〔東洋ミドル級初防衛〕
  • シート・ナノンリット(ウエルター級3位)
  • ピサンダ・ラートカル〔試合結果のみ〕
  • ペイント・ロジャーナ〔試合結果のみ〕
  • バイヨク・ボーコーソー〔試合結果のみ〕
  • チャンデ・サイスリーム〔試合結果のみ〕
  • ダイオイリスト・プラサ〔試合結果のみ〕
  • ピサンダ・ラートカルモ〔試合結果のみ〕


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