- 平松伸二「リッキー台風(タイフーン)」9
クラーク・ロビンソン vs リッキー・大和(NWA/AWAジュニアタイトルマッチ):承前
リッキーは手刀でクラークの額を叩き割って流血させ、正気を失ったクラークをローリング・ジャーマン・スープレックスで抑え込んで勝利をもぎ取る。リッキーは、クラークに勝てたのはテリーのおかげだと、協力を惜しまなかったテリーに感謝の言葉を口にする。
試合後、NWAは早くもリッキーに次のタイトルマッチを指示してきた。挑戦者はテリー・ブロンコだと。
テリーだってもちろんチャンピオンへの野望はある。が、現時点ではパワー・テクニック・スピードすべて、リッキーが一枚上手。どうすればリッキーに勝てるのか……
テリー・ブロンコ vs リッキー・大和(NWAジュニアタイトルマッチ)
ゴングが鳴る前にテリーはいきなりトレードマークの帽子を投げつけ、驚くリッキーの顔面に正拳を、胃袋につま先蹴りを叩きこむなど、ラフファイトを仕掛ける。相手が反則をしても決して反則をやり返さない誇り高いテキサス魂はどこへ行ったのか? ようやくゴングが鳴るが、反則技で痛めつけたリッキーを抑え込んでテリーがあっさり一本先取。
二本目はローリング・ドラゴン・スープレックスの大技でリッキーがテリーを倒す。これで一勝一敗のタイ。
三本目はどちらが取るか。二人は必死になって一進一退の攻防を繰り広げるところで幕。
全体の感想
最終章の展開と終わり方を見て、当時、これは傑作だと思ったのだ。これまでずっと陰に日向にリッキーを助けてきたテリーが敵に回ること、勝機を見出すためにテリーが賭けたのは反則技を身につけること。これによって初めてテリーは対等な挑戦者として、一進一退の攻防を繰り広げることができたこと。そして決着がつく前に話が終わったこと。確かに第9巻はとてもよい。
今回約40年ぶりに改めて読んで思ったのは、ストーリーの展開は結構ぐだぐだだったなあ、ということ。
志摩京子に一目惚れし、同じ高校に転入までしたが、プロレスの試合が始まってからは高校の関係者は一切登場しなくなる。当初はギャグやお色気もふんだんにあったが、途中からギャグは封印され、お色気も、志摩京子、夜叉姫、サンディが退場すると、描かれなくなった。
後半は硬派なプロレスものだが、早い回で満を持して登場したナルシスがリッキーのライバルになるのかと思ったが、いつの間にか姿を消してしまった印象。読み直すまで覚えていなかったのも頷ける。
ルー・テーズ、カール・ゴッチ、ジャイアント馬場、アントニオ猪木、バーン・ガニアなど、超有名のレスラーが実名で登場するが、狂言まわしとして以上の役割を担っておらず、もったいない使い方だった。プロレズ好きなら尊敬したり憧れたりする名前だが、その人が子供のレスリングの試合を見て驚いたりため息をついたりするだけのために登場するのを見て、残念に思った人もいたのではないか。
ほかにも、いろいろと欠点は目につくが、「ドーベルマン刑事」をずっと原作付きでやってきて、自分でストーリーから設定から考えた初めての作品だと思えば、目くじらをたてるほどのことでもないだろう。
ダラダラ続けずに短く終わったのは吉。名作だと言ったのは取り消すが、佳作であるのは間違いない。