鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌」(全3巻)

  • 倉尾宏「北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌」1 - 3(ゼノンコミックス)

北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」がとても面白く、作者の倉尾宏はほかにどんな作品を描いているのかと確認したところ、なんと、「拳王軍ザコたちの挽歌」の作者だった。意外な気がした。この作品は読んだことがあったが、同じ人だとは思わなかったからだ。

とにかく全3巻を一気買い&一気読み。

世紀末、生きていくのもやっと世界で、三食付き、誰でもできる簡単な仕事! に晴れて就職を果たしたサブだったが、なんと就職先は拳王軍だった。「誰でもできる」は宣伝文句で、主な仕事は近隣の村を襲って略奪すること。人が良くて小柄・非力なサブには最も不向きな仕事に思えるが、意外になじんでいく……

話はとても面白い。実際、何度も声をあげて笑った。この作者にはギャグのセンスが確かにある。

「ザコたちの挽歌」とあるように、登場するのは、本編でやたらにすごんで見せたり、素人には残忍なところを見せたりしながら、ケンシロウと戦うと至極あっさり片付けられてしまった「ザコキャラ」ばかりである。一瞬だけの登場でもなんとなく印象に残っていたキャラがある程度じっくり描かれるあたり、本編を補完するものとしての楽しさもある。

もっとも、これらのキャラと、ケンシロウとの絡みを覚えていないと多分、ほとんど面白くないのではないか。スピンオフ作品の宿命でもあるが、超有名作品だからこそ成り立つともいえるだろう。

残念ながら絵が下手だ。人物の顔や体型は、原哲夫に寄せて描いているということもあって、決定的な破綻はない。が、パースが狂いまくり。だから、広い場所を俯瞰するようなシーンは画面酔いしそうになる。一コマに数人が登場するような場面でも、互いの位置関係がはっきりしない。

また、女性があまり美人に描けていない。ユリアはもちろん、マモヤも、息をのむような美しさだからこそ物語が成り立つ。そこはもうちょっと努力してほしかった。

北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝」を見ると、どちらも見事に上達している。よほど努力をしたのだろう。



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