鞄に二冊

少しでも空き時間ができると、本が読みたくなる。

「激マン」4

デビルマン」の創作は作者にとってかなりの負担だったようだ。せっかく「ハレンチ学園」をやめたのに、すぐに「マジンガーZ」を始めることになって(そのいきさつについては触れられていないが、のちに「マジンガーZ編」として語られることになろう)、仕方がないので「あにまるケダマン」をやめたが、それでもきつい。それで、ついに「あばしり一家」をやめることにした。

いい判断だったと思う。「あばしり一家」は面白い作品で好きだったし、作者からしても編集部側からしても、毎週毎週それなりの人気をつかむことはできただろうが、10年、15年と続けるべき作品だったかといえばそうではなかったのではないか。4年間、パァーっとバカなことをやって、すっと消えていったのがよかったと思う。

それにしても、編集部が打ち切りを告げてくるとか、作者がそれに必死で抵抗するも、マネージャーに「これ以上わがままを言っては悪い」と止められるとか、疲れるというと「そんな効率の悪い作品はやめた方がいい」とか、「間もなく終わる作品なんだから、これ以上力を入れても仕方がない」とか、なぜ周囲はそんなことばかり言うんだろう。今、目の前でこの作品に接していて、「これは日本の漫画の歴史を変えるぞ」となぜわからない?? この作品だけは万難を排して守らなければと考えなかったのか?*1 このエネルギーを、魂を感じないのか??? 当時、漫画を読んでいた小学生の僕だって、これはほかの超人ヒーロー漫画と何か違う、と思い始めていたのに……。もっとも、「激マン」という漫画の演出上、わざとそう描いているのかも知れないけど。

引用している「デビルマン」の漫画は、当時の原稿ではなくリライトされているが、不動と飛鳥が携帯電話で話を始めたのは驚いた。

デーモンが人間に総攻撃を仕掛け、わずか1分で世界は大混乱になった。その時の飛鳥了は、あまりの出来事にパニックになっていたということもあるだろうし、そんな中でも自分の予想が当たった、自分の考えは正しかったということの安堵(?)もあっただろうけど、何やら妙に嬉しそうなのは、作品を読んだ時も気になっていた。作者も違和感を持っていたとは驚きだ。

驚きといえば、世紀の傑作ギャグ漫画「廃人20面チョ」が、この超多忙な中で生み出されていたとは信じられない。掲載誌をずいぶん何度も読み返したなあ。あれは少年ジャンプの愛読者賞だったのか。

週刊少年チャンピオンという雑誌

少年チャンピオン」という週刊漫画誌は、この時代、「ドカベン」が不動の一位で野球漫画を牽引、SF作品は「原始少年リュウ」や「バビル二世」、怪奇・オカルト分野は「魔太郎がくる!!」や「恐怖新聞」と、ラインナップが揃っていたが、ギャグが弱いと言われていた。そこへ「がきデカ」が登場し、一気に地図が変わる……

そう言われるたびに、「ふたりと5人」があっただろう、「ドカベン」に阻まれていたけど、人気はずっと2位だったはずだぞ! と吾妻ひでおファンの自分は忸怩たる思いでいた。が、その自分も「あばしり一家」のことを失念していた。「あばしり一家」は創刊号からの掲載で、ずっとアンケートトップ。ということは、そもそもチャンピオンはギャグ漫画なんじゃないか! ギャグが弱いと誰が言い出したんだ?



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*1:もっとも、「ハレンチ学園」をやめて始めた「マジンガーZ」も、「あばりし一家」をやめて始めた「キューティーハニー」も、時代を変えた作品だから、「デビルマン」だけを守ればいいというわけじゃなかったのだ。永井豪は、本当にすごい作家だ。